バードリサーチニュース

第1回バードリサーチ・バードソン 1054カ所で249種を観察

バードリサーチニュース2019年6月: 3 【活動報告】
著者:神山和夫

図1.バードソン期間中の毎日の観察回数と総地点数

 野鳥観察を競技にしたバードソン(バードウォッチング+マラソン)は1日で何種の鳥が見られたかを競うことが多いのですが、バードリサーチでは野鳥記録を登録するWebサイト「フィールドノート」を使って2019年6月1~16日に観察した種数を競う、インターネット版のバードソンを開催しました。ルールは簡単で、16日間に日本国内で観察した野鳥の種数で順位が決まります。従来のバードソンでは日の出から日没までに多くの場所を巡りますが、こちらのバードソンは普段のバードウォッチングの延長で種数を競うので、気軽に参加してもらえたのではないでしょうか。ただし参加者が観察した種数と順位がWebサイトで1時間ごとに更新されるようにしていたので、競技としての要素は強かったかもしれません。

 それでは結果を見ていきましょう。バードソン期間中にフィールドノートWebサイトには、153名の参加者から1367回もの観察記録が登録されました(図1)。観察された野鳥は249種。観察地点は1054カ所あり、全国鳥類繁殖分布調査で使用している20kmメッシュにすると日本の半分近くが網羅されています(図2)。

図2.野鳥観察が行われた場所(20kmメッシュ)。色が濃いほどメッシュ内に観察地点が多い。

地元で観察された方が多かったようです

 表1はトップ10に入賞された皆さんです。バードソン期間の後半は激しい攻防が続いて、何度も順位が入れ替わる熱戦でした。トップ3の方々は100種を超えています。それから印象的だったのは、参加者の多くが地元で観察をされたことでした。繁殖期に開催するバードソンでは野鳥の種数が多い北日本が有利かと思われましたが、ホームグラウンドの強みを活かして様々な環境で鳥を見ていくと、全国どこでも、こんなにたくさんの野鳥を見ることができるのです。トップ100の皆さんの種数と順位はこちらのサイトでご覧いただけます

表1.バードソンで観察種数トップ10になった参加者の皆さん

 

観察頻度が高い種と、数は少ないが分布が注目される種

表2.観察頻度の高い15種。

 表2は観察が多かった種のトップ15です。おなじみの鳥が並んでいて、多くが市街地や都市緑地などで見かける種です。それから、たくさんの観察の中には、まだ数は少ないけど分布が広がりつつある種の記録もありました。例えば、近年繁殖が増えてきているジョウビタキが長野県山間部の4地点で記録されました。ジョウビタキは冬鳥でしたが、2010年代になって長野県や中国山地で繁殖地が広がってきています。それからバードリサーチニュース2018年9月: 1 でご紹介したセグロカッコウが大分県と兵庫県で観察されました。セグロカッコウは繁殖しているかは分かりませんが、2000年代後半から記録が増え始めて、九州から中国地方にかけて分布が広がってきているようです。

分布図

 たくさんの地点から観察記録が集まったので、いくつかの種について20kmメッシュで分布を描いてみました。

図3.左からアオジ、オオムシクイ、カンムリカイツブリが観察された20kmメッシュ。赤が観察されたメッシュ、白は観察されなかったメッシュ。クリックで拡大します。(写真 谷英雄)


アオジ
 アオジが冬鳥という地方は多いのですが、6月の分布から北海道東北地方や中部山岳地帯が繁殖分布であることが見て取れます。

オオムシクイ
 オオムシクイは道東の一部で繁殖していますが、主な繁殖地は千島列島より北にあります。他の夏鳥より渡り時期が遅めで、6月前半のバードソン期間中に渡り途中の個体が各地で観察されました。

カンムリカイツブリ
 カンムリカイツブリは近年越冬数が増えているだけでなく、繁殖分布も広がっています。バードソンで観察のあったサロベツ、大潟村、琵琶湖などは過去に繁殖記録がある場所ですが、残念ながらバードソンの記録からは今年繁殖してるかまでは分かりません。

 そこで、皆さんにお願いがあります。フィールドノートでは記録した種ごとに観察コードという情報を入れることができます。観察コードは鳥類繁殖分布調査で使っている記録項目で、「さえずりを聞いた」「巣立ちビナを見た」などの繁殖に関わる行動を記録することができます。フィールドノートに野鳥の記録をされる際は観察コードも記入していただけるとありがたいです。

 これからもバードリサーチ・バードソンを開催していきたいと考えています。次回もぜひご参加下さい。

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