バードリサーチニュース

生態図鑑 ノジコ

バードリサーチニュース2017年6月: 2 【生態図鑑】
著者:出口翔大

ノジコ オス成鳥 [Photo by 福田幸充 ]

○英名 Japanese Yellow Bunting 学名 Emberiza sulphurata

○分類 スズメ目 ホオジロ科

○羽色
 オス,メスともに白いアイリングがあり,下嘴は青灰色で,尾羽の外側2枚(T5,T6)に白色部がある.繁殖期のオスは頭部が灰色味のある黄緑色で,目先は黒い.体上面は淡い黄緑色味を帯びた褐色で黒色の縦斑がある.中雨覆および大雨覆の先端は白っぽい.メスは全体的に茶色味を帯び,体下面の黄色は淡く,脇腹の縦斑も多い.非繁殖期では,オスは目先が灰色になり,全体的にくすんだ色となる.メスは全体的に茶色味が強くなる.

○生息環境 
 繁殖期は低山帯の沢筋の林縁や湿地を伴った低木林・疎林などに生息している.これらに共通するのは湿潤な環境とやぶ・低木林であると考えられる.富士山北麓では湿潤な環境を有さないカラマツ林に主に生息している.このような環境は全国的に存在すると考えられるが,本種の分布が局地的である点が興味深い.越冬地では標高1500mまでの草本または低木の密生した環境や草地,農耕地などを利用する.

○巣・卵
 低木の高さ1~2m程の枝上や草本の根元に枯れた草の葉茎などを用いて椀形の巣を造る.産座には草木の細根などを敷く.卵は,灰白色の地に暗褐色の斑があり,一腹卵数は3~5卵(清棲 1978).

○中山間地域の放棄田との関係
 本種は,新潟県南部の中山間地域において高密度で繁殖している.中山間地域では全国的に水田の耕作放棄が進み,ヨシやススキ,セイタカアワダチソウなど丈の高い草本やタニウツギなど低木の優占するやぶ環境が拡大している.やぶ環境を好むノジコにとって,水田の耕作放棄は生息環境の増加につながるのではないか?調べてみたところ,ノジコの生息数には耕作放棄によって形成されたやぶよりも,林縁の長さや,雪崩地の指標として用いた地すべり跡地の面積が効いていることが分かった.ノジコは繁殖期に,つがい形成や営巣場所としてやぶ環境を利用するだけでなく,採食やさえずり場所として高木も利用する.そのため,やぶ環境と高木が隣接する林縁や地すべり跡地(山の斜面に存在し,雪崩地と同様に丈の高い草本や低木が優占するため,森林とやぶ環境が隣接している)が好まれたものと考えられる. しかし,ノジコは放棄田のヨシ原やススキ原にも営巣しており,副次的な繁殖環境として放棄田も利用しているものと考えられる.一方で秋の渡りの時期には,多くの個体が中山間地域の耕作放棄地であるヨシ原を利用する.筆者らが2014年の秋に行った調査では,約0.4haのヨシ原で1日あたり約50個体が標識放鳥された.また,前述した中池見湿地も周囲を山に囲まれ,放棄田にヨシ原が広がっている.このように,中山間地域の放棄田に形成されるヨシ原は,渡りの中継地として本種に重要な環境であると考えられる.

◆その他掲載記事
 ・分類
 ・全長,自然翼長,尾長,露出嘴峰長,ふしょ長,体重
 ・鳴き声
 ・分布
 ・繁殖システム
 ・抱卵・育雛期間
 ・渡り
 ・食性と採食行動
 ・雪国そだち
 ・人知れず減少する恐れ

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