龍ヶ崎市の野鳥をしらべる(報告書)
龍ヶ崎バードウォッチングクラブ
購入方法 http://rbwc.jp/houkokusyo20151010.html
霞ヶ浦の南にある龍ヶ崎市で活動している龍ヶ崎バードウォッチングクラブから、2004~2014年の間に毎月1回、10年間継続して行った野鳥調査の記録をまとめた「龍ヶ崎市の野鳥をしらべる」を寄贈していただきました。
“MKK(メッシュ観察記録)”と呼ばれるこの調査は、龍ヶ崎市を約1km四方の三次メッシュ77個に区切り、各メッシュの代表的な場所に設定した1kmのコースを毎月調査するというものです。図1はメッシュ全体の地図と、調査担当者のコメント付で紹介されている各メッシュの環境概要です。
調査の記録はバードリサーチがWebで提供している野鳥データベース「フィールドノート」に入力して整理し、そこから抽出したデータを使って報告書が作られました。
報告書の中心になっているのが、メッシュ記録をフル活用した種別の分析の章で、種ごとに季節変化・経年変化・生息メッシュの三点セットと解説文が並べられています。この章は個体数の変化傾向を見るのに大変便利で、例えば、夏鳥や留鳥は年変動が小さくグラフの変化がなだらかなのに比べて、冬鳥は毎年の凹凸が大きく、さらに冬鳥が少ない年は複数の種で同期していることなどが分かります(図2)。次に、経年的な個体数変化について一定の傾向がありそうな種を見てみると、増加している種はキジ、ヒドリガモ、オオバン、アオサギなどで、減少している種はゴイサギ、アマサギ、コサギ、ユリカモメ、セッカ、ムクドリ、コジュリンなどでした。
コジュリンは絶滅危惧Ⅱ類に指定されている希少種で、龍ヶ崎市では龍ヶ崎飛行場の草地が最大の繁殖地になっています。報告書には、MKKとは別に毎年6月に行われている飛行場の調査のまとめも載っています。それによると、コジュリンのオスの個体数(さえずっているオスを調査しています)は2001年の調査開始以来、毎年30羽前後で安定していたのですが、最近2年は10数羽に減っています。全市では休耕田が減ったことで繁殖可能な場所が減少しつつあるということですが、飛行場でも個体数が減っているのは心配なことです。
長期に調査を続けるための工夫
月1回の調査でも、長く続けていくのは大変なことだと思います。何か秘訣があるのかと思って、会長の岸さんにお尋ねしてみました。岸さんのお話では、トピックス的な鳥の記録を会報に掲載したり、年一回の総会でその年のデータ集計をプリントして報告し、会員の皆さんで結果を共有するようにしてきたそうです。こうしたことで調査担当者の苦労がねぎらわれ、さらに互いの記録を参考にすることで龍ヶ崎市全体の野鳥の状態が明らかになり、調査の励みにもなったのではないかと思います。
それから、バードウォッチングを始めて日の浅い方は、自信が持てなくて調査に参加しづらいと思いますが、龍ヶ崎バードウォッチングクラブでは、ベテランが初心者の方のメッシュへ出向いて一緒に調査したり、毎年1回、初心者向けの勉強会も実施してきたそうです。
自治体レベルで生物多様性保全計画を作る動きが広がりつつありますが、基礎データが不足している自治体が多いようです。MKKのような調査が街作りのプランの参考にされ、環境保全に活かされるようになればと願います。