調査方法が確立して,今までその生息すら知られていなかった鳥の状況がわかってくる…。そんな鳥の 1つがシマクイナです。繫みの中に潜み,小さくて目立たない。そんな発見の難しいシマクイナの状況が,プレイバック法により調査できることがわかり,関東地方では広く越冬していることや(高橋ほか 2018,福田ほか 2019),北海道での繁殖が確認されるようになりました(Senzaki et al. 2020)。
そして,これまで迷鳥だと考えられていた九州でも越冬している可能性を示したのが今回 Bird Research誌に掲載された論文です。
北沢宗大・吉岡俊朗 (2021) 九州北部におけるシマクイナの越冬を示唆する記録.Bird Research 17: S13-S18.
論文の閲覧:http://doi.org/10.11211/birdresearch.17.S13
北沢さんと吉岡さんは,2021年の1月から2月にかけて岡山県,徳島県,香川県,佐賀県,長崎県内のシマクイナが越冬していそうな10地点において,プレイバック法をもちいて生息の有無を調査しました。その結果,10地点のうち,佐賀県と長崎県の2地点にてシマクイナの声が確認されました。佐賀県の調査地では捕獲調査により,それがシマクイナであることも確認し(写真),長崎県の調査地点では,1月10日と1月22日ともに複数個体を確認し,シマクイナが九州北部で越冬している可能性が示唆されました。この冬も生息が確認されれば越冬していることがほぼ確実になりますし,中部や近畿など現在情報の空白地域になっている地域でも調査が行なわれ,越冬しているのかどうかが明らかになっていったらいいですね。