○英名 Greater Painted Snipe ○学名 Rostratula benghalensis
○分類 チドリ目 タマシギ科
○羽色
幼綿羽を除く全ての羽衣の翼羽と尾羽にバフ色の水玉模様があり,眼の周囲に特徴的な白い勾玉模様がある.顕著な性的二型および年齢差をもち,雌成鳥は頭部から胸にかけて暗赤褐色で,肩羽から雨覆は濃緑色.雄成鳥および幼鳥は互いに似るが,幼羽では胸の暗色帯が不明瞭で,雨覆や尾羽の水玉斑のバフ色味に乏しい傾向がある.また,独立直後の幼鳥は嘴が灰色みを帯びることから,赤みを帯びる成鳥と見分けられる.幼綿羽は灰褐色の地色に黒色と赤褐色の縦縞模様のある迷彩色となっている.
○鳴き声
繁殖期の夕方から夜間にかけて,雌が「コォー,コォー」というよく響く特徴的な声で鳴く.雌は飛びながら上記の声で鳴くこともある.無風条件では最大1㎞ほどの距離でも聞こえることがある.この鳴き声には周波数の高さに2パターンあり,状況によって使い分けている可能性がある.
○生息環境
国内では主に水田やその周辺環境に生息する.繁殖場所としては特に草丈の低い湿った休耕田を好む.越冬期には農業用水路に入ることもしばしばある.
○繁殖システム
一妻多夫で雌は主に夜間にさえずり雄に求愛する.雄とつがいになると1週間程度のつがい形成,造巣,産卵期間を経て,すべての卵を産み終えると雌は巣を離れ,次の雄とつがいになるための求愛行動に移行し,抱卵と子の世話は雄のみが行なう.
○個体数減少と休耕田との関係
本種は,国土スケールでも地域スケール(茨城県の2か所)でも減少が確認され,その原因は圃場整備による圃場の乾燥化と湛水された草丈の低い休耕田の減少であると考えられ,特に湛水休耕田がタマシギの個体群存続にとって重要な役割を担っていると考えられた.時代とともに集約化されていく農地景観の中で,タマシギなどの湿地性鳥類と共存可能な環境をどのように管理していけるかが今後の課題となっている.
◆その他掲載記事
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・形態と換羽
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・巣と卵
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