春から夏にかけて、かわいいヒナを連れたカルガモ家族は大人気。でも、ヒナの数は日に日に減ってしまいます。いったいどのくらいのヒナが成鳥になれるのでしょう? ヒナたちの無事を願いながら見守る「カルガモ・サバイバル調査」の結果を報告します。
調査方法と調査地
この調査では、まず生まれて間もないヒナを見つけて、そのときのヒナ数を「初認数」とします。カルガモの一腹卵数は10~14個なので、それより多いと別の親のヒナが混ざっています(ヒナ混ぜ行動はこちらの記事で説明しています)。また、ヒナがかなり少ない場合は卵の時期も含めて初認より前に捕食された可能性があります。これらを考慮しないと一腹のヒナの生存率は分からないのですが、この調査では小さなヒナがどれだけ捕食されてしまうかを知りたいので、初認時点のひと群れのヒナを追跡するという方法を採りました。そして、ヒナが減るケースでは10日以内にほとんどがいなくなっているので、10日以上の観察結果を分析対象にしています。最後にヒナを見たときの数が「終認数」です。なおヒナが全滅した場合は10日より短い日数でも分析に含めています。カルガモに標識していないので、ヒナ連れの家族が去った後に別のカルガモが来ているなどで全滅と誤認したケースもあるかもしれませんが、そのあたりは大らかに考えて調査しています。以上のような方法で、2019年の4~7月に10地点(表1)から21家族の情報があつまりました。
生き残りの好条件は、場所か、生まれる時期か?
図1はヒナの生存率(終認数÷初認数×100)の分布です。ヒナが全滅してしまったケースが9家族、一部が生き残ったのが8家族、全員大きくなれたのが4家族でした。ヒナの死亡原因は分かりませんが、カラス、ネコ、ヘビなどによる捕食ではないかと思われます。
ヒナの生存率には場所の影響、そして生まれた時期の影響が考えられます(図2)。データ数が少ないのでどちらの影響かを判断しにくいのですが、複数家族が観察された地点では、協同の杜JA研修所と栃木県中央公園でヒナが全滅したケースが多く、多摩中央公園ではヒナの生き残ったケースが多かったことから、捕食者にくり返し襲われやすい場所や、捕食者が少なかったり、人の多い公園で捕食者がヒナに近づきにくかったりという地点の特性があるのかもしれません。それからヒナが全滅しがちな調査地の影響もあるので明確ではありませんが、初認時期が5月のヒナの生存率が高かったので、生まれた時期による生存率の違いがあるとも考えられます。この理由には、天敵であるハシブトガラスの子育てが活発になる前に産まれたカルガモのヒナは捕食されにくいことなどが考えられます。
カルガモはいま、換羽地に集まっています
さて、子育てを終えたカルガモたちは、いまどうしているでしょう? ガンカモ類は繁殖が終わった後に風切羽を一度に抜けてしまい、再び羽が生えそろうまでは飛ぶことができなくなります。東京で見ていると、いまの時期、風切りが抜けている成鳥とまだ飛べないヒナたちは都市公園の池に集まっていて、公園の芝生を食べている姿がよく見られます。都市公園は人が多いため天敵が近づきにくいし、エサをもらえることもあるので、飛ぶことができない時期には都合のよい生息地なのでしょう。みなさんの近くではどんな場所に換羽地があるのか、探してみてはいかがでしょうか。