島での進化と聞いて,どのようなものを想像するでしょうか?島ではヤンバルクイナのように飛べなくなることもあれば,ガラパゴスフィンチのように嘴の形態が多様化することもあります.あまり知られていない島での進化の一つにメラニズム(黒化現象)というものがあり,これは文字通り体色(鳥の場合は羽)が黒くなる現象です.そのメラニズムについて海外で面白い論文があったのでご紹介します.
著者のウイさんとバルガス‐カストロさんはソロモン諸島でチャバラカササギビタキのメラニズムについて調べました.チャバラカササギビタキは名前の通り,お腹が茶色く,それ以外は黒い鳥なのですが,一部の島では名前に反してお腹も黒いハラグロな個体が見つかっていました(写真).そこでウイさんたちは大小13の島を巡ってチャバラカササギビタキのお腹を撮影し,黒いお腹の面積と黒い個体の割合を調べました.すると面白いことに,小さい島ほどハラグロ個体が多いということが分かりました.なぜ小さい島ほど黒くなるのでしょうか?調査した島々はとても近く,生息環境や気候,餌資源や捕食者などはほとんど同じであるため,環境の違いではないようです.
著者の過去の研究から,ハラグロな個体ほどより攻撃的だという事が分かっていました.チャバラカササギビタキに限らず,鳥類は鮮やかな個体ほど攻撃的なことが多く,黒い鳥ではより黒く,赤い鳥ではより赤い個体の方がオス同士の競争で優位に立ちます.そのため,「小さい島という限られた空間では繁殖のための縄張り競争がより激しく,より攻撃的な個体,つまりチャバラカササギビタキではより黒い個体が生き残った」という自然選択が働いたのだとウイさんたちは考えています.
日本でも,南西諸島や伊豆諸島などの大きさの違う島が複数あるところでは少しずつ鳥の色も違うのかもしれませんね.島への旅行の際にはぜひ気にしてみて下さい.