オオタカが種の保存法から解除
2017年9月21日。オオタカが種の保存法に基づく「国内希少野生動植物種」から解除されました。かつてオオタカはレッドリストにおいて「絶滅危惧II類(危急種)」でした。それが「準絶滅危惧」になり,その状況が長く続いているため,ほかの種とのバランスから「国内希少野生動植物種」にしておくことが難しくなり,今回解除となったのです。
この解除はオオタカの状況が絶滅に瀕した状態ではなくなったということを意味しますので,喜ぶべきことなのですが,心配なことがいくつかあります。
1つは解除によってオオタカが減ってしまうのではないかということです。皆さんも感じられているかと思いますが,オオタカは2000年代にかけて各地で分布を拡げ,増加しました。しかしその後,多くの地域でやや減少に転じているようです(図1)。減少に転じたといっても,絶滅危惧II類に再選定されるほどではないので,解除の判断自体は妥当なのですが,解除により,オオタカの保護が緩めば,その減少がさらに加速してしまうことが心配されます。
もう 1つはこれまでオオタカの存在によって守られてきた里山の保全の機能が弱くなってしまうことです。オオタカに代わる保全の枠組みがないのが現状です。
そして,国内希少野生動植物種でなくなることで,これまでは環境省が捕獲許可の権限を持っていましたが,それが都道府県に移ります。オオタカがレース鳩を獲ってしまうということで,鳩愛好家からの有害捕獲の要請が出ていますが,これまで有害捕獲は許可されていませんでした。しかし都道府県への移行により簡単に有害捕獲が許可されないかも心配です。
環境省の解除の影響調査がスタート
こうした問題に対応するため,環境省は簡単には捕獲許可を出さないような仕組みをつくるとともに,今年度から,「オオタカ生息状況等調査業務」を立ち上げました。バードリサーチはこの業務の事務局を務めることになりました。この調査では,解除後のオオタカの個体数の変化や保護状況の変化をモニタリングします。調査は5年を目処に考えているということですが,影響はそうした短期間で出るとは限りません。環境省事業が終わっても長期的なモニタリングができるような体制を今から考えておく必要があります。
必要なNGO中心のモニタリング体制の確立
そこで,この調査が終了した後も継続できるようなモニタリング体制として,皆さんが観察されているオオタカの状況を収集し,状況を把握する仕組みをたちあげたいと思います。この調査は日本オオタカネットワークなど他のNGOとも連携して実施し,環境省事業が終わっても続けていけるようにしたいと思います。
皆さんが観察されているオオタカの営巣地を登録していただき,それを可能な範囲で継続して観察していただき,それをもとにオオタカの動向を明らかにしようというものです。もし調査の結果,オオタカがさらに減少し,レッドリストのランク変更が必要になってきたら,このデータをもとにその変更を提案していきます。レッドリストを選定する「鳥類分科会」にはバードリサーチからは植田が加わっていますので,そのあたりは実効性をもって対応できると思います。
ご協力いただける方は,以下のサイトにアクセスしてください。そして,2016年(指定解除前)と2017年について,オオタカの繁殖状況を登録してください。
登録項目は,営巣地名,場所,営巣地の環境,繁殖の成否,失敗の原因等です。
来年度以降については,登録いただいた営巣地の名前をご連絡させていただき,その年の繁殖状況についてご報告いただくような仕組みにしていけたら,と思っています。ご協力よろしくお願いいたします。