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研究誌新着論文:ヒメアオキの種子散布者はヒヨドリ

バードリサーチニュース2017年12月: 1 【研究誌】
著者:植田睦之

センサーカメラで撮影されたヒメアオキを食べるヒヨドリ

 「生態系サービス」の例として昆虫による受粉の話がよくあげられます。「昆虫がいなくなると,受粉ができなくなって,果物や野菜が実らなくなってしまうんですよ」なんて,人の生活に直接昆虫が関わっていることが伝わってわかりやすいですよね。虫に比べると鳥への依存度はちょっと低いですが,鳥も似たような役割を果たしています。ヒヨドリやメジロは果物などの受粉の役割を果たしていますし,実を食べて種子を散布する種子散布も森の植生を更新させるのに重要な役目を果たしています。そんな種子散布の論文がBird Research誌に掲載されました。


中川皓陽・北村俊平(2017)中部日本のスギ林における常緑低木ヒメアオキの量的に有効な種子散布者はヒヨドリである.Bird Research 13: A55-A68.


 中川さんたちは石川県でヒメアオキの持ち去りをセンサーカメラで記録し,どんな動物がヒメアオキの種子散布を担っているのかを調査しました。4月下旬に調査を開始してすぐにヒメアオキの果実は持ち去られ,3週間後にはほとんどの果実が消失しました。そして,そのほとんどはヒヨドリによるものと推測され,ヒヨドリのヒメアオキの種子散布への貢献の大きさが示されました.ヒメアオキの実は3月から4月に熟します。この時期にはほかの木の実がないために,利用率が高いのだと中川さんたちは考えています。
 この研究でもヒヨドリの種子散布の影響の大きさが示されましたが,日本ではヒヨドリの個体数の多さや,分布や生息環境の幅の広さ,身体のサイズなどから,ほかの多くの植物でもヒヨドリの種子散布への重要性が示されています。全国鳥類繁殖分布調査の結果を見るとヒヨドリは特に北の地域で分布拡大が顕著です。ヒヨドリが分布を拡げた地域では,こうした鳥散布の植物の分布拡大にもつながるのかもしれないですね。

論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.13.A55