2020年の完成を目指して調査を進めている全国鳥類繁殖分布調査。今年も調査にご協力いただきありがとうございました(まだの方はぜひご参加を!)。8月10日時点でデータの届いている調査コースの数はついに1,000コースを超えました。
「来年データが増えて結果が変わってしまったらどうしよう」とちょっとビクビクしながらも,昨年の8月のニュースでは,初年度の結果速報として夏鳥の復活の可能性を紹介しました。今年の調査結果を加えても,幸いこの傾向に変わりはありませんでした。これに気をよくして,今回は地域による分布変化の特性について紹介したいと思います。1回目は北海道。シマフクロウ,クマゲラ,タンチョウ,ハシブトガラなど北海道にしかいない鳥も多い地域ですが,今回紹介するのは,全国的に分布する鳥たちです。
調査コースが違うと当然結果も変わってしまうので,前回(1990年代)の調査コースから変更の少ない調査地について,その出現の変化をみてみました。多くの鳥は北海道でも全国と同じような分布変化をしているのですが,オオヨシキリが分布を拡大していたり,ハクセキレイが逆に分布を縮小しているなど,北海道ならではの変化が見られました。
北海道では分布を拡大
~オオヨシキリ~
全国的には明確な分布変化の傾向はないが,西日本ではやや分布が縮小傾向にあり,東日本も個体数でみると減っている印象もあるオオヨシキリ。北海道では逆に分布を拡げているようです。
過去の記録と今回の分布変化をみてみると,北海道では全域で新たに見られるようになった調査地がありますが,特に道東では,今まで見られなかった地域への分布拡大が見られています。ちなみに近縁のコヨシキリについては,まだまだ普通に見られますが,減少傾向にあるようです。
全国的には増えているけれども・・・ ~ハクセキレイ~
温暖化の影響かそれとも生息環境の影響かは分かりませんが,最近,分布の拡大が顕著なのはリュウキュウサンショウクイ,ヒヨドリなどの南に生息していた鳥です。そんな中で気を吐いている北の鳥がハクセキレイ。南へ南へ分布を拡大させていて,今回の結果でも全国的に分布を拡大させていました。しかし北海道は違っています。逆に見られなくなった調査地が多いのです。そして東北地方は変化なし。もともといた場所と,分布を拡大している場所との違いなのか,あるいは北海道のハクセキレイの生息環境が悪化しているのか…。データを蓄積しつつ見ていきたいと思います。
個体数が少なく記録が安定しない? ~メジロとヤマガラ~
メジロとヤマガラ,北海道でも全国でも両種とも分布に顕著な傾向はないのですがそのパターンは北海道とほかの地域で大きく違っていました。全国的には前回と今回と両方記録された場所がほとんどで,いなくなったコースと新たに記録されたコースが少しあるというパターンなのですが,北海道ではその逆。両方記録されたコースは多くなく,いなくなったコースや新たに記録されたコースが多いのです。メジロもヤマガラも北海道ではまだまだ少なく,記録が安定しないのでしょうか? これから分布の変化が見えてくる可能性があるので,注目していきたいと思います。
北へ分布を拡げているオオヨシキリ,北から分布を拡げているハクセキレイ,北で数の少ないメジロやヤマガラといった「日本の一番北の北海道だから」と考えられる分布傾向の違いが見られました。これ以外にも自然分布ではなく北海道では人為分布ですが,キジ(北海道はコウライキジ)が減っていそうだとか,ハシブトガラが減っていそうだとかいうことも見えてきています。
このあたりをより明らかにしていくためにはさらに多くの場所で調査をしていくが必要があります。北海道にはまだまだ調査者の決まっていないコースがたくさんあります。調査できそうなコースがあれば,ぜひ調査登録をお願いします。
調査登録はこちらから https://db3.bird-research.jp/~birdatlas/volunteer.html