ガンカモ類の飛来数が非常に多かったり、湖沼が広くてガンカモ類が岸から遠くにいるなどで目視による個体数調査が難しい生息地で、ドローンを使った空撮写真からガンカモ類の数を調べられないか試行調査をしています。今年の秋の調査では、実用的な個体数カウントの目処が付いてきました。ドローン調査は環境省のモニタリングサイト1000の一環で実施しています。昨シーズンの調査を紹介した、その1、その2もご覧下さい。
オオハクチョウの数を自動カウント
コムケ湖(北海道紋別市)では近年オオハクチョウの数が増えていて、2015年秋には5千羽を越えたことから、目視だけでは調査が難しくなっていました。コムケ湖の直径は2km以上もありますが、小高い観察地点がないため湖岸からはオオハクチョウは重なり合って見えてしまい(写真1)、数千羽にもなるとカウントが困難です。オオハクチョウはデントコーン畑の落ち穂などを食物にしていて、ほとんどが日の出ごろにコムケ湖から飛び立ちます。そのため、空が白み始めてから日の出までの30分ほどの間に撮影しないといけないのですが、ドローンで湖面の1/4ほどを撮影する時間しかないため、今回はオオハクチョウが集中しているエリアで、当地で調査をされている大館和広さんに協力していただいて撮影を行いました。写真2上は高度150mから撮影した写真の一部ですが、写っていたオオハクチョウは793羽で、成鳥と幼鳥も区別することができました(写真3)。さらにImageJというフリーソフトウエアを利用して、画像処理によってオオハクチョウの数を自動カウントすることを試みたところ、誤差2%でカウントすることができました(写真2下)。ドローン調査の対象になるガンカモの群れは数千~数万羽にもなるので、自動カウントは強力なツールです。
猛禽類の視点からカモの群を見る
バードリサーチが使っているPhantom3(DJI社製ドローン)のカメラ性能では、かなり高度を低くしないと種の識別ができないので、低空で混群にいる種の識別までしようとすると写真1枚あたりの撮影範囲が狭くなり、群れ全体の撮影に時間がかかってしまいます。そのため、いまのところマガンやオオハクチョウのように、単一種で大きな群れを作る種をドローン調査の対象にしています。しかし空から見るカモの群れは地上で見るのとはずいぶん違って、驚くような光景を目にすることがあります。下の動画は2016年9月22日に北海道北部のポロ沼(宗谷郡猿払村)で撮影しました。接近して撮影した写真4,5を見ると、ほとんどがスズガモですが、茶色い水面採食ガモが少し混ざっていました。この茶色いカモたちは上空からは見つけにくく、もし自分が猛禽類だったら目立った色のカモを狙うだろうなと思いました。カモ類のメスやエクリプスは体の上面の茶色が他の部位よりも濃く、上空の天敵に対して保護色になっています。冬に鮮やかな繁殖羽になるカモのオスの場合でも、きれいな色の模様は体の上面ではなく、空から見えない脇腹に発達しているようです。
動画の再生を始めると右下に歯車のアイコンが表示されるので、そこで「画質」に1080pを選択すると、高解像度になりカモがよく見えます。さらに[YouTube]という文字をクリックしてYouTubeのサイトに移動すると、大きな画面で見ることができます。カモ類はドローンをあまり気にしないので、普段は写真5のように近くまで接近できます。しかし動画を撮影した日は警戒心が強く、最後は飛んで逃げてしまったので、カモたちには申し訳ないことをしました。北海道北部ではオジロワシがカモを襲うことがあるので、この日はワシが出没して、カモの警戒心が高まっていたのかもしれません。