○英名 Japanese Wood Pigeon 学名 Columba janthina
○分類 ハト目 ハト科
○鳴き声
グルルッ,ウーウウーッと押し殺したような声で鳴く.また少し高い調子でアゥアウーゥと鳴くこともある.飛翔しながらガルルルーと声を出すこともあり,威嚇行動と考えられる.
○分布
亜種カラスバトは,京都府冠島以南の本州および九州周辺の離島,伊豆諸島,奄美諸島,沖縄諸島,韓国の一部の離島に留鳥として分布する.亜種アカガシラカラスバトは小笠原諸島に,亜種ヨナグニカラスバトは先島諸島にのみ分布する.
○巣
樹上に細い枝などを組み合わせて粗雑な巣を作る.宮崎県の枇榔島と小枇榔などでは地上営巣が確認されている.アカガシラカラスバトは主に地上営巣し,タコヅルの薮やタコノキの根元などを利用する.
○食性と採食行動
樹上で果実や種子を採食するほか,地上に降りて落下した果実や種子を採食する.伊豆諸島では主にツバキの種子を採食する.アカガシラカラスバトは長時間地上で採食し,脂肪分の多いアコウザンショウ,キンショクダモ,アカテツなどを好むが,後述のように外来植物も高頻度で採食する.
○島々を行ったり来たり
小笠原諸島の固有亜種であるアカガシラカラスバトは,飛翔能力が低く,島ごとに異なる集団として生息すると考えられてきた.しかし,2002年7月に父島で捕獲された個体が,同年10月に父島から約4.5km離れた弟島で確認されて以降,島間移動が次々と確認され,小笠原諸島を形成する聟島列島,父島列島,母島列島の列島内の移動は珍しくないということが分かってきた.さらに,父島と母島を含む小笠原群島の集団と,母島から約150km南にある北硫黄島の集団の間には遺伝的な交流があることが明らかになり,より広範囲で移動している可能性がある.なぜ島間を移動するのかは分かっていないが,ひとつの理由として考えられるのが食料事情だ.小笠原諸島では島によって結実樹種が異なり,結実量も季節的に大きく変動する.大型の種子食鳥であるアカガシラカラスバトは,年間を通して果実を確保できる環境を必要とするため,限られた島の環境で十分な食物を確保することは難しいと考えられる.そのため食物を探して島々を移動し,それぞれの島で結実している果実を柔軟に利用しているのかもしれない.
○外来植物は大事な食料!?
糞のDNA分析の結果から,アカガシラカラスバトは外来植物を頻繁に利用していることが明らかになった.年によるが,在来の植物の結実量が少ない夏に外来種が利用されることが多いと考えられる.利用されている外来種は,在来種よりも脂肪含有率が低く,食物としての質は低いと考えられる.好みの食物ではないものの,食料不足を補うためには必要なのだろう.世界自然遺産に指定されている小笠原諸島では,外来植物の駆除が行われている.もし,アカガシラカラスバトが利用する外来植物を一度に駆除してしまえば,深刻な食料不足に陥るかもしれない.そうした事態を避けるためには,外来植物の駆除と同時に,食物が不足しがちな時期に結実する在来種を植栽するなどの対策が必要だろう.
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