2024年度もバードリサーチ調査研究支援プロジェクトへのご協力をいただき、ありがとうございました。その投票結果をとりまとめましたので、ご報告いたします。
2024年度は23件の応募の中から選ばれた8件と、バードリサーチからの1件を合わせた9件の調査研究プランが支援対象でした。投票総数は589票,支援総額は1,767,000円でした。このうち8割を得票数に応じて分配し、2割を10件の調査研究プランに均等割りで分配して、各調査・研究プランごとの支援額を決定し、支援先に贈呈いたしました。たくさんのご投票とご寄付をいただき、皆さまには心よりお礼申し上げます。
2024年度の投票結果
このプロジェクトをスタートさせたのが2011年度でしたので、今回で14回目の支援となりました。2022年度が多くの投票と寄付を集めていましたので、ここ2年は減少傾向です。とはいっても、多くの方にご支援いただいており、最初の5年間に比べると投票数も支援額も倍増しています(図)。例年10件の調査研究プランを支援しているところ、今年度は9件だったこともあり、1件あたりの平均支援額は約20万円を維持しています。他の助成金に比べると金額は大きくありませんが、会計報告や使途の制限のない調査研究費としてご活用いただいています。
2024年度の調査研究プランの中で最も多くの票を集めたのは細谷淳さんたちによる調査研究プラン「ホイピピピピピピ!!春を告げる渡り鳥、チュウシャクシギの命をつなぐ渡りルートを探る」でした。それに続いた得票数2位の岡村悠太郎さんと橋本啓史さんによる調査研究プラン「エコロジカルトラップからスズメを守る-巣立ち率の悪い営巣環境とその条件に関する調査-」、僅差で得票数3位になった知花峻輝さんと大槻恒介さんによる調査研究プラン「食害防除策が非害鳥であるタゲリに与える影響の解明」をご紹介します。
個体数の減少が懸念されるチュウシャクシギの命をつなぐ渡りルートを探る
特徴的な声を持ち、日本を春や秋に通過するチュウシャクシギですが、個体数の減少がモニタリングサイト1000などの調査で指摘されています。原因には海外での狩猟のほか生息環境の変化が考えられており、洋上風力の影響も心配です。しかし、中継地の日本でどのように環境を選んで過ごしているのか、繁殖地や越冬地がどこなのかもわかっていません。そこで、細谷さんたちは春にこの鳥を捕まえてGPSロガーを装着し、移動を追跡しようと計画しています。
巣場所がトラップ?? 意図せぬ罠からスズメを守る
身近な鳥ながら減少が懸念されているスズメ。電柱の腕金など人工構造物の隙間に営巣することが知られていますが、太陽光にさらされる腕金などの内部は相当な温度にまで上昇しているハズです。腕金はスズメを捕まえて殺すことを意図していませんが結果的にそんなトラップになってしまっていないでしょうか?岡村さんと橋本さんは模擬巣も用いて、孵化したヒナのうち巣立つことができたヒナの数と巣内温度の関係を調査します。
悪いことしていないのに光に追われるタゲリ
昼間水に浮かんでいるカモ類の中には夜中に農地に飛来して採食しているものがいます。諫早中央干拓ではカモ類による麦の新芽の食害が問題となっていて、光照射による追い払いが行われています。知花さんと大槻さんは農業被害に関わっていないタゲリがこの光に敏感に反応していることに気づきました。そこで、タゲリにGPSロガーを装着し、光の照射を受けた時の逃避行動を調べ、採餌や休息が邪魔されていないかや、越冬場所の選択に影響を及ぼしているかどうか解析しようとしています。
調査研究支援プロジェクト2024 支援先調査研究プラン
今年度の調査研究プランの内容について、もう一度確認したいという方は、下記のリンクからどうぞ。
どれも興味深い調査や研究です。良い成果が得られることを期待したいと思います。
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001 鳥の翼を操る筋肉の秘密-立体的な動きを可能にする仕組みを解明せよ-
簑島あすか(千葉大学機能生態学研究室)
002 ウミスズメの繁殖地を探せ!三陸沿岸の海上目視・音声調査
森野千里・小島達樹・小澤光莉(東洋大学大学院生命科学研究科)
003 エコロジカルトラップからスズメを守る
-巣立ち率の悪い営巣環境とその条件に関する調査-
岡村悠太郎(名城大学大学院農学研究科修士課程1年)・橋本啓史(名城大学農学部)
004 みんなで夜のフライトコール(NFC)録音調査(2年目)
大坂英樹(トリルラボ)
005 鳥は離婚の準備をしてるか?
坂井充・中田知伸(北海道大学理学部4年)・堀内晴(北海道大学理学院修士1年)
006 ホイピピピピピピ!!春を告げる渡り鳥、チュウシャクシギの命をつなぐ渡りルートを探る
細谷淳1、田谷昌仁1,2、井上遠、仲村昇3
(1.日本鳥類標識協会2.東北大学生命科学研究科3.(公財)山階鳥類研究所)
007 食害防除策が非害鳥であるタゲリに与える影響の解明
知花峻輝(長崎大学環境科学部)・大槻恒介(長崎大学大学院水産・環境総合研究科)
008 遺伝子と形態から紐解く多種多様なオオコノハズクの謎
江指万里・宗像みずほ(北海道大学・理学院)
009 バードウォッチングスキルアップ手法の研究
バードリサーチ
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