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研究誌新着論文:東京都本土低地部における繁殖鳥類の1970 年代から2010 年代の40 年間の変化

バードリサーチニュース 2024年9月: 1 【研究誌】
著者:植村慎吾・守屋年史

2016年から2020年にかけて実施した東京都鳥類繁殖分布調査は、全国鳥類繁殖分布調査よりも詳細な1kmメッシュで繁殖鳥類の分布と個体数を調べた調査です。そのデータを使って、東京都の低地部の変化を記述した論文が掲載されました。

植田睦之・佐藤望(2024)東京都本土低地部における繁殖鳥類の1970年代から2010年代の40年間の変化. Bird Research 20: A33-A40.
論文の閲覧:https://doi.org/10.11211/birdresearch.20.A33

 

全国では減少していたが東京都では増加していたコサギ

全国では減少していたが東京都では増加していたコサギ

全国鳥類繁殖分布調査の方の結果では、一部の夏鳥を除くと森林性の種の多くが1970年代から1990年代、2010年代と続けて分布を拡大していることがわかりました。しかし、東京都鳥類繁殖分布調査の結果からは、1970年代から1990年代までの間には森林性の種でも減少した種が多く、その後2010年代にかけては分布や個体数が回復していたことがわかりました。東京都における強い土地利用圧と、近年の都市緑地を増やす施策によって全国とは違う変化パターンが見られたのかもしれないと著者らは考察しています。
 この論文ではその他にも、森林以外の環境に生息する種の状況、留鳥と夏鳥での分布や個体数の変化、外来鳥の変化などについても解析がされています。東京都は世界でも最も都市化が進んでいる場所である反面、都市緑化にも早く取り組んでいる地域です。これからも、人為的な影響によって鳥類相に変化がみられるかもしれません。

バードリサーチとして、今後も東京都の鳥類相の変化をモニタリングできる体制を整えて行けたらと思います。

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