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研究誌新着論文:特定外来生物ガビチョウによる直接的な鳥類の巣への捕食の可能性

バードリサーチニュース 2024年8月: 1 【研究誌】
著者:植村慎吾・守屋年史

全国鳥類繁殖分布調査などで過去数十年の間に分布が急拡大していることがわかっている特定外来生物のガビチョウが、在来の鳥の卵捕食者であるかもしれないという論文が掲載されました。

水村春香(2024)特定外来生物ガビチョウによる直接的な鳥類の巣への捕食の可能性. Bird Research 20: S39-S44.
論文の閲覧:https://doi.org/10.11211/birdresearch.20.S39

 

人工巣から擬卵を持ち出すガビチョウ(赤丸が人工巣)

ガビチョウは国内で分布を急拡大していますが、在来種への影響は明らかになっていませんでした。ガビチョウによる鳥の卵や生体の捕食例はこれまでにありませんでしたが、近縁種は小型の脊椎動物を食べることが知られています。そこで、水村さんはガビチョウが定着している富士河口湖町の調査地でモズなどの巣を模した人工巣を設置し、その中に擬卵を置いて、ガビチョウによる持ち去りがあるかどうかを実験しました。その結果、ガビチョウが擬卵を持ち去る様子が動画に記録され、ガビチョウが在来の鳥の巣への捕食者となっている可能性が初めて示されました。

人工巣から擬卵を持ち出したガビチョウの動画は以下からご覧いただけます。
幹と太い枝の二股部分にある園芸用の苔で作られた人工巣からガビチョウが擬卵を持ち去った場面です。
https://jstagedata.jst.go.jp/articles/media/Video_showing_Garrulax_canorus_carrying_away_eggs_from_an_artificial_nest_/26183054

 

食性データベースから初めての引用

移入種として分布を広げているガビチョウの国内での食性情報はほとんどなく、食性データベースが唯一の情報源として論文中に取り上げられていました。食性データベースが論文で引用されたのはおそらく初めてです。観察者の皆さんによる地道な情報の蓄積がこのように取り上げられるのは嬉しいですね。

 

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