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研究誌新着論文:広島県におけるハヤブサの営巣数の変化と営巣環境

バードリサーチニュース 2023年12月: 3 【研究誌】
著者:植田睦之

 山田さんは広島でハヤブサの調査を続けていて,以前にもBird Research誌にハヤブサの捕食成功率の論文を発表しています(山田 2011)。今回は35年にわたる広島での営巣数や営巣環境の変化について論文にまとめました。


山田一太 (2023) 広島県におけるハヤブサの営巣数の変化と営巣環境.Bird Research 19: S23-S26.

論文の閲覧:https://doi.org/10.11211/birdresearch.19.S23

 

採石場跡のハヤブサの営巣地

 山田さんは,1988年に広島の島嶼部でハヤブサの調査をはじめ,その後調査地を拡げて,現在は山口県と島根県西部を含む広範囲で調査を継続しています。この論文は,広島県についてその変化をまとめたものです。調査期間を2007年以前の前期と2008-2023年の後期に分けて比較すると,島では大きな変化がないのに対して,本土部では25巣から39巣と大きく増加していることがわかり,特に採石場での営巣が増加していることがわかりました。広島では海砂利採取が禁止され,採石が活発になっているそうで,それが,採石場での繁殖の増加に効いていそうだということです。また,ハヤブサの繁殖地は安定していて,放棄された繁殖地は少ないのですが,人工物に営巣した場合の継続率は低かったということです。人工物の巣は雨ざらしになることが多いことや,コンクリートや金属の平らな床面なため,卵が転がってしまったりして安定しないことが原因でないかということでした。ハヤブサの人工物での繁殖はよく話題になりますが,営巣場所に砂利など敷いて卵が転がらないようにして,水はけも良くしたような場所を作ってあげたりしないと,安定した繁殖地にはならないのかもしれないですね。