バードリサーチニュース

調査研究支援プロジェクト2022年度 ~投票結果のご報告~

バードリサーチニュース 2023年5月: 2 【活動報告】
著者:高木憲太郎

 2022年度もバードリサーチ調査研究支援プロジェクトへのご協力をいただき、ありがとうございました。その投票結果をとりまとめましたので、ご報告いたします。

 2022年度は15件の応募の中から選ばれた9件と、バードリサーチからの1件を合わせた10件の調査研究プランが支援対象でした。投票総数は2021年度の675票を上回り、プロジェクト開始後最多となる738票の投票があり、支援総額は2,222,000円になりました。このうち8割を得票数に応じて分配し、2割を10件の調査研究プランに均等割りで分配して、各調査・研究プランごとの支援額を決定し、支援先に贈呈いたしました。たくさんのご投票とご寄付をいただき、皆さまには心よりお礼申し上げます。

2022年度の投票結果

図.得票1位~5位の得票数(上)と投票数と支援額の推移(下)。

 投票状況はホームページでお知らせしていましたが、序盤から多くの表を集めていた原星一さんによる調査研究プラン「新発見の連続-夜に渡る鳥のカウント-」が最後まで首位を守り通しました。細谷淳さん、田谷昌仁さん、竹田山原楽さんによる「STOP「#アオシギいない」!-アオシギの保全のための越冬地での行動範囲、渡りルートと繁殖地の解明-」(最終得票数 2位)も多くの票を集めて追い上げ、肉薄しました(図)。
 この2件の調査研究プランの得票数が多かったので、3位以下が少なく見えてしまいますが、3~5位の調査研究プランも40票以上を獲得しています。支援先の研究者の皆さんには、その調査研究プランに投票された方の人数と共に、匿名を希望された方以外のお名前を伝えています。そのやり取りの中で感じることは、ともすれば、ひとりで研究計画を考え、黙々と調査をすることもある中で、誰かしらに応援してもらえている、評価してもらえているということが研究者の皆さんの心の支えになっているということです。

 

夜に渡る鳥を識別してカウントする
 原星一さんによる夜渡る鳥の調査は、2021年度に続き2年連続で一次審査を通過しました。1年目の2022年の8月から11月までの間に記録した渡り鳥の記録では、マミチャジナイとアオジがそれぞれ3,000羽以上記録されていて、他の鳥よりも頭抜けて多かったようです。旅鳥として日本を通過するマミチャジナイが、冬鳥として馴染みのツグミの10倍も津軽海峡を越えて行っているかもしれない、と想像するとちょっとドキドキしますよね?原さんには、2023年1月7–8日にオンラインで開催した鳥類学大会でも発表していただきました。

原星一さんによる調査研究プラン「新発見の連続-夜に渡る鳥のカウント-」

 

アオシギの生態を解き明かす
 細谷さん、田谷さん、竹田さんによるアオシギの調査は、少し離れた距離から遠隔操作でデータのダウンロードができるGPSロガーを使用して、越冬地での環境利用や行動範囲のほか、渡りルートや繁殖地の解明を目指しています。また、得られた知見をもとにアオシギのモニタリング方法の検討もします。アオシギは冬鳥として山間部の渓流や湿地に渡来しますが、生態があまりわかっていない鳥のひとつです。アオシギを探したけれど見つけられなかったというSNSの書き込みが多いなか、減っているのかどうかを把握するための調査方法の確立はとても大事だと思います。どんな成果が得られるのか、楽しみにしたいと思います。

細谷淳さん、田谷昌仁さん、竹田山原楽さんによる「STOP「#アオシギいない」!-アオシギの保全のための越冬地での行動範囲、渡りルートと繁殖地の解明-」

 

調査研究支援プロジェクト2022 支援先調査研究プラン
今年度の調査研究プランの内容について、もう一度確認したいという方は、下記のリンクからどうぞ。
どれも興味深い調査や研究です。良い成果が得られることを期待したいと思います。

001 モテる雄は冬に頑張る!? ミソサザイの雄の
    非繁殖期のなわばりが繁殖成功に与える影響の解明

   惣田彩可(京都大学動物行動学研究室 修士課程2年)
002 世界最北のカラスバト?!
    -その基礎生態の解明に向けて-

   小峰浩隆(山形大学農学部)
003 新発見の連続-夜に渡る鳥のカウント-
   原星一
004 秋田県におけるイヌワシの生息実態調査
   秋田猛禽類調査グループ(ARSG)
005 森の時空間的変化に対する鳥の反応-30年で鳥はどう変わる?-
   柴山潤太(名古屋大学農学部4年)
006 湿地の茂みに隠されたヒクイナのごはん事情
    -DNAメタバーコーディング解析に基づく餌組成の解明-

   大槻恒介(長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科)
007 フクロウの夜の営みを声から暴く!?-ダイトウコノハズクの交尾研究-
   金杉尚紀1・佐々木瑠太1・澤田明2(1北大・院理 2国環研・学振PD)
008 STOP「#アオシギいない」!-アオシギの保全のための
    越冬地での行動範囲、渡りルートと繁殖地の解明-

   細谷淳1・田谷昌仁1,2・竹田山原楽1,2
   (1日本鳥類標識協会 2東北大学生命科学研究科)
009 繁殖のお手伝い?リュウキュウオオコノハズクのヘルパーの謎に迫る
   江指万里(北海道大学・理学院)
010 イワヒバリが生息するすべての山を明らかに!
   バードリサーチ