バードリサーチは4月に事務所を引っ越しました。新事務所は国立駅近のビル。執務スペースはきれいで快適になったのですが,窓からよく見られる鳥は,ドバト・・・以上。スズメ,シジュウカラ,ムクドリ,ヒヨドリなどの普通種はもちろん,エナガやホンセイインコなどがしばしば現れ,ツミや水鳥も通過して行くのが見られた以前の事務所と比べると寂しい限りです。
でも,そんな場所だからこそ気づいた鳥の行動があります。ヒヨドリが,なぜか夕方になると事務所の前に飛んでくるのです。
飛来時刻を記録してみた
そこで,2022年7月24日から,ヒヨドリがいつ見られたのかを記録し,そして何をしているのかを観察してみました。ヒヨドリは,まったく現れない日もありましたが(トイレや食事中に来ていて気づかなかっただけかもしれません),1日1回,たまには2回現れました。その時間帯はやはり夕方,17時台あるいは18時台がほとんどでした(図1)。そしてこちらの視線を警戒して,すぐ飛び去ってしまうこともありましたが,たいていは看板の周辺や表面から何か小さなものを摘み取って食べていることがわかりました。何がいるのかよく見てみると蜘蛛。東大の宮下直さんに聞いてみると,イエオニグモというクモだそうです。7月30日からはイエオニグモについても時刻別にクモが見える位置にいたかどうかを記録してみました。イエオニグモは日中は隙間に隠れていて,見つけることができないのですが,夕方,17時台か18時台になると表面に出てきて網を張りだしていました(図1)。つまり,クモが活動をはじめて,捕まえやすい時間帯にヒヨドリは飛来して,クモを食べているようなのです。
ほかのヒヨドリは?
バードリサーチ事務所のヒヨドリは,夕方にクモが捕れることを認識して行動しているようですが,ほかの場所のヒヨドリはどうなのでしょうか? 普段あまりヒヨドリが見られない場所でないと,こうした行動をとっているかどうかを認識しにくいとは思いますが,同様の行動が見られる場所があれば,植田まで教えてください。一緒にデータを取ってまとめてみませんか?
イエオニグモについても疑問に思うことがいくつかあります。1つは毎日のようにヒヨドリに食べられているのに,なぜいなくならないかです。宮下さんによると,定住性の強いクモだということで,なおさら不思議です。クモにとって,ビルの看板は,光に集まる虫を捕ることのできる良い場所なので,あまり空腹ではなく,毎日網を張ったりせず,ぼくが思うよりもたくさんのクモがいるのかも,ということでした。だとすると,早い時間帯から活動をして,ヒヨドリに捕食されやすい「せっかちなクモ」から食われていって,遅くから活動を始めるクモばかりになっていったりしないでしょうか? 今のところ,そのような兆候は見られませんが,データを溜めていこうと思います。
家でもできる鳥の調査
このように,家の窓からでも,注意して見ていると,鳥の生態調査ができます。観察していて,ふと疑問に思うことがあれば,まずはそれをデータ化してみると,面白いことが見えてくるかもしれません。また,今は特に「これ」というアイディアはなくても,フィールドノートに観察した種や時刻を記録しておくだけでも,あとで気づいたことを振り返って確認することもできます。ぜひバードリサーチの「フィールドノート」を使って記録をつけてみてください。
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