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研究誌新着論文:道央圏における秋期のタンチョウの生息状況

バードリサーチニュース 2022年8月: 4 【研究誌】
著者:植田睦之

 タンチョウと言えば,釧路湿原など道東の鳥というイメージがあるのではないでしょうか?この地域への集中が保護上の問題点とされ,環境省などによる分散計画が進められています。そして2000年代に入ってから道北で,そして2010年代になって道央でも繁殖が確認されるようになっています。その道央のタンチョウの状況を一斉調査した記録が今回,論文としてまとまりました。


正富欣之・小山内恵子 (2022) 道央圏における2020年秋期のタンチョウの生息状況.Bird Research 18: S9-S13.

論文の閲覧:https://doi.org/10.11211/birdresearch.18.S9

 

タンチョウ(撮影:三木敏史)

 2020年10月に,苫小牧市から栗山町,新冠町にわたる道央圏で一斉調査を行ないました。タンチョウは繁殖期には人目に付きにくい湿地の奥にいるのですが,ヒナが飛べるようになると,人目につきやすい場所まで出てくるようになり,また積雪もなくて調査もしやすい時期ということで,秋に調査することにしたそうです。この一斉調査に,その後の補足調査を加えることで,少なくとも4繁殖つがいを含む15羽のタンチョウが生息していることがわかりました。道央圏では2012年に最初の営巣が確認されているので,8年間で4つがいに増えたことになります。道北でも8年間で3つがいに増えているので,ほぼ同じような経緯をたどっているようです。
 道東では冬期に給餌場にあつまるので,そこでの個体数調査が行なわれていますが,道央圏ではそのような場所はないそうです。分布が拡がっていくと,一斉調査は大変になりそうですが,大型の鳥なので,撮影機材の向上もあり,ある程度の個体識別もできますので,そうした方法も併用しながら分布や繁殖状況をモニタリングしてくことが,タンチョウの分散計画の評価や改善に重要だと思いました。