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研究誌新着論文:ジョウビタキが営巣場所として好む換気扇フード

バードリサーチニュース 2022年5月: 1 【研究誌】
著者:植田睦之

ジョウビタキは冬鳥の代表種ですが,近年,日本でも繁殖するようになり,その分布は拡がっています(植田・植村 2021)。日本では人工構造物に営巣していることが明らかにされていますが(山路・林 2018),もともとジョウビタキは樹洞や壁の隙間などに営巣する種です。八ヶ岳では人工構造物のなかでも換気扇フードの中での繁殖が最も多く,樹洞営巣性のジョウビタキがなぜ,入り口の広い換気扇で繁殖するのかを捕食者からの隠ぺい度に着目して調べたのが今回掲載された論文です。


山路公紀・石井華香 (2022) ジョウビタキが営巣場所として換気扇フードを好む理由.Bird Research 18: A21-A29.

論文の閲覧:https://doi.org/10.11211/birdresearch.18.A21


 捕食者からの隠ぺい度は,外から巣がどの程度見えるのかで測ることが多いのですが,山路さんたちは,逆に,巣の周囲を計測して,巣(親鳥がいる位置)からどのくらい外が見えるかを計算してそれを求めました。その結果,換気扇フードの開口部の面積はジョウビタキが営巣するかどうかに影響はなく,外があまり見えない換気扇フードを利用していることがわかりました。また,換気扇での巣の隠ぺい度にはフードカバーがどれくらい下を向いているかと巣がどれくらい奥に作れるかが重要になるのですが,調査地にある換気扇のフードカバーの角度にはあまりばらつきがないため,奥行きの長さが利用されるかどうかに効いていることもわかりました。

 今回は換気扇での研究でしたが,それ以外の人工構造物でも同様のことを調べていけば,ジョウビタキの営巣場所選択がより理解できるようになるかもしれませんね。

ジョウビタキが営巣した換気扇と今回の研究での巣の計測部位


引用文献
植田睦之・植村慎吾 (2021) 全国鳥類繁殖分布調査報告 日本の鳥の今を描こう 2016-2021 年.鳥類繁殖 分布調査会,府中市.https://www.bird-atlas.jp/news/bbs2016-21.pdf 
山路公紀・林正敏 (2018) 八ヶ岳とその周辺におけるジョウビタキの繁殖状況と環境の特徴.Bird Research 14: A23-A31.