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研究誌新着論文:鳥は電柱・電線にどのようにとまるのか

バードリサーチニュース 2021年4月: 2 【研究誌】
著者:植田睦之

電柱・電線の鳥コレクション。左から,ミサゴ,ハシブトガラス,カワラヒワ,アトリ,モズ,スズメ,ノスリ,ブッポウソウ(撮影:三木敏史)


日本に電柱って何本あるか知っていますか? 3,592万本もあるそうです。そしてそこには何本もの電線が架かっています。海外では電線は地中化されていることが多いので,たくさんの電柱と電線は,日本ならではの風景だそうです。
 電柱電線は,もちろん人間のためのインフラですが,鳥にとってのインフラにもなっています。巣をかけたり,休憩したり探餌する止まり場所としたり…。どんなふうに鳥たちがそれを利用しているのか,止まり場所に注目してまとめたのが三上さんたちのこの論文です。

三上 修・三上かつら・森本 元・上野裕介 (2021) 鳥類は電柱および電線にどのように止まるのか.Bird Research 17: A11-A19.

論文の閲覧:http://doi.org/10.11211/birdresearch.17.A11

 

 全国の7都市で,越冬期と繁殖期に調査した結果,鳥は越冬期よりも繁殖期に電線電柱によく止まること, 体重が重い種ほど電線よりも電柱に止まる傾向があること,多くの種が最上段の電線によく止まることなどがわかりました。

 こうした記載は,震災対策として今後進むだろう電線の地中化が鳥に与える影響の推定,鳥の感電死やそれに伴う停電の問題の解決策の検討,電線にとまった鳥が落とす糞害への対策法の検討など,いろいろなことにつながりそうなので,今後の研究に期待したいと思います。