インターネット・バードソンは、全国のバードウォッチャーが観察記録を野鳥記録データベース「フィールドノート」に登録して種数を競う競技です。2020年5月23日~6月7日に開催した第3回大会では、286名の方参加され、1928カ所で3399回の野鳥観察が記録されました(図1)。なお、今回は新型コロナウィルスの影響のため種数の競争は行いませんでしたが、観察種数が多かった上位3名の観察種数は、138種、115種、111種でした。
今回はコロナウイルスの感染予防のため人との接触を避けるという観点から、自宅周辺での観察を呼びかけていました。そのためもあってか、観察頻度が高い種の上位には身近な野鳥がランクインしています(表1)。トップ30はほとんどが留鳥で、夏鳥ではツバメ、キビタキ、ホトトギス、オオヨシキリ、カッコウが上位に入りました。ホトトギスが托卵するウグイス(7位)、そしてカッコウが托卵するオオヨシキリ(23位)とオナガ(30位)の記録が多いので、これらの種は同じ場所で観察されやすいのかもしれませんね。
身近な野鳥の繁殖分布図
今回のインターネット・バードソンは「バードウォッチングで繁殖分布調査に参加しよう」をテーマにして開催しました。全国鳥類繁殖分布調査は日本で繁殖している野鳥およそ250種を調べて、数と分布の変化を調べる調査で、現地調査に加えて今回のバードソンの記録を含む、皆様がフィールドノートに登録された繁殖期の観察記録を利用させていただいています。では、バードソンの結果も加えた2020年6月23日時点の記録から作成した分布図で、観察頻度が高い種について見ていきましょう。はじめに、1位のスズメと3位のツバメです。スズメが全国にいるのに比べて、ツバメは東北北部と北海道では少ないことが分かります。気候のせいか住宅密度のためか分かりませんが、北の方ではツバメが住みにくい理由があるようです。
続いては、バードソンのホームページで繁殖分布調査の情報不足種の例として紹介したドバト(15位)です。市街地に多い種なので山間部の記録がないのは分かるのですが、新潟以北の日本海側に少ないことが不思議ですね。北海道には分布しているので雪が苦手なこともなさそうです。一方、ハト類の最上位はキジバト(7位)。北海道から沖縄まで広範囲に分布しているだけでなく、低地から高山までの標高にも適応していて生息地の範囲が広い種です。日本の野鳥の中でも、ウグイス、ヒヨドリに次いで分布が広いことが分かっています(バードリサーチ YouTubeライブ)。
標高という言葉が出てきましたが、高原の鳥といえば何が思い浮かぶでしょう? 私は大阪出身で、カッコウ(26位)は涼しい高原の鳥(そして静かな湖畔で鳴いている!)というイメージを持っていたのですが、東京に引っ越したら、なんと住宅の屋根でテレビアンテナに止まって鳴いていました。カッコウは西日本では高原の鳥ですが、静岡付近を境に東では低地でも見られる種になります。一方、カッコウの仲間のホトトギス(18位)の分布は北海道南部から沖縄で、カッコウより南よりになっていることが分かります。
今年は全国鳥類繁殖分布調査の最終年です。2016~2020年の繁殖期のバードウォッチングの結果をフィールドノートに登録していただくと、分布図に反映されます(観察コードの入力が必須です)。WebフォームやExcelファイルなどを使った報告方法もありますので、詳しくはこちらのサイトをご覧下さい。みなさんのバードウォッチング記録で、日本の鳥の今を描きます。ぜひご参加下さい。