バードリサーチでは、2017年からホシガラスの分布状況の調査を実施しています。この調査では、アウトドアメーカーであるモンベルの協力を得て一般の登山者の方たちにも呼びかけて目撃情報を集めています。
2シーズンにわたり皆さまにご協力いただき、たくさんのホシガラスの目撃情報を集めることができました。ホームページの送信フォームなどで皆さまからお寄せいただいた情報に加え、登山記録サイトに掲載されていた写真情報を加えたところ(登山記録サイトには、ホシガラスの写真が多数掲載されており、これをボランティアの方に一つずつチェックしていただきました)、なんと、2684件もの目撃情報が得られました。
これらの情報を国土地理院の「日本の山岳標高一覧(1003山)」と照合してみました。目撃情報は登山者が増えれば、それだけ多くなる可能性が高いので、目撃情報が多いからと言って「ホシガラスがたくさんいる」とは言えません。そこで、山頂から半径5kmの範囲でホシガラスが目撃されたかどうか、ゼロかイチかの情報に変換しました。
ハイマツの球果はホシガラスの繁殖期の主要な食物と考えられています。そこで、東北~中部山岳を対象に、植生図を利用してハイマツの有無*とホシガラスの目撃の有無を比較しました(図)。すると、ハイマツの分布している山でホシガラスが多く目撃されていました(図中▲)。ホシガラスは秋になるとせっせとハイマツの実を貯食している姿がみられます。厳しい冬の食糧を確保できるハイマツのある山は、彼らにとって生活しやすい場所なのでしょう。
しかし、ハイマツがない山(▲)でもホシガラスは目撃されています。富士山もハイマツのない山ですが、ホシガラスが生息しています。彼らは、ハイマツの代わりにゴヨウマツの実を貯食していることが調べられています(西 ・別宮2015)。ハイマツがないのにホシガラスが目撃されている山は、中部山岳の比較的標高の低い山のほか、越後山脈に集中しているようです。これらの山では、ハイマツに代わる食物が多く得られるなど、なにか理由があるのでしょうか?
逆に、ハイマツが分布しているのに、ホシガラスが目撃されていない山(▲)もあります。東北地方で多い傾向がありますが、山頂の標高は1000~2000mほどで特に標高に偏りはなさそうです。日本海側など、人口が集中している関東などからアクセスのあまり良くない山もあるので、登山者の目が少ないため、記録されていないだけでしょうか?これらの山はハイマツがあると言っても、その面積が狭いので、食物が理由で実際にホシガラスも分布していないのでしょうか?
今年はこれらの山がどんな環境なのか、実際に登りに行きたいと思っています。もし皆さんの中で、「こんな理由じゃない?」と気づいた方がいましたら、高木(takagiあっとまーくbird-research.jp)まで、メールを頂けるとうれしいです。ぜひ、お知恵をお貸しください。
ホシガラスを探せ!! 目撃情報募集のページ【Google Mapバージョン】
http://www.bird-research.jp/1_katsudo/hoshigarasu/hoshiQ2.html
ホシガラスを探せ!! 目撃情報募集のページ 【旧バージョン】
http://www.bird-research.jp/1_katsudo/hoshigarasu
*植生図の「高山性低木林」と「ハイマツ・コケモモ群落」をハイマツの分布域として利用した
引用文献
西 教生・別宮(坂田)有紀子 (2015) ハイマツのない富士山でゴヨウマツの種子を貯食するホシガラス. Strix 31: 113-123.