バードリサーチニュース

オナガガモも土日はお休み?

バードリサーチニュース2018年12月: 1 【活動報告】
著者:植田睦之・嶋田哲郎

給餌された食物に集まるオナガガモ

 

 皆さん,週末はどうしていますか? 毎日がお休みの人もいれば,食堂など平日に休みがあって土日は仕事の人,週末も平日も何も変わらぬブラックな日々を過ごしている人もいるかとは思いますが,お休みの人が多いのではないかと思います。
 私たちは,GPS発信機を使って伊豆沼でカモ類やハクチョウ類の移動状況の追跡をしています(嶋田ほか 2018 ニュースレター2018年5月: 3)。その結果や目視観察から,オナガガモには「給餌に頼りきっているもの」「給餌には頼らず水田で採食するもの」「給餌も利用し,水田でも採食するもの」の3タイプがいることがわかりました。そのうち給餌と水田両方利用するオナガガモの水田への「出勤」状況を見てみると,オナガガモも土日祝日は「お休み」な傾向があることがわかりました。

 この調査は2015年と2017年の冬に実施したものです。伊豆沼でオナガガモにGPS-TXという鳥の動きをGPSで追跡する発信機を装着し,その動きを追いました。追跡した7羽のうち,4羽は給餌に依存している個体で追跡期間中,給餌場を離れることはありませんでした。そして残りの3羽は給餌を利用しているものの水田にも「出勤」していく個体でした。1羽は発信機の故障ですぐに追跡できなくなってしまったので,2週間以上,行動を追跡することのできた2羽についてその「勤務状況」を見てみました。
 発信機装着後2-3日のあいだは,オナガガモたちは捕獲した池を離れず,静かにしていました。しかしその後は,夜になると水田に採食に行って,日中は池に滞在するというパターンをくりかえすようになりました。しかし,毎日水田に出勤するわけではありません。「休日」があることもわかりました。そして,その休日をカレンダーに記入してみると,なんと,オナガガモも土日祝日が「休み」のことが多いのです(表1 Fisherの正確確立検定 P<0.002)。

 なぜなのでしょうか? 伊豆沼では観光客が「ポン菓子」という米を膨らましたものを給餌しています。おそらく土日祝日は観光客が多く,給餌量が多くなるために満腹になり,夜に採食に行かなくなるのではないかと思われます。土曜日よりも日曜祝日の方がさらに「休み」になることが多いのも,日曜祝日に多い観光客の動きと一致しています。給餌はオナガガモの分布にも影響を与えると考えられていますが(ニュースレター2018年3月: 3),日周行動にも影響していると言えそうです。