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生態図鑑 オオルリ

バードリサーチニュース2018年7月: 2 【生態図鑑】
著者:徐 敬善(セオ キョンソン)

オオルリ 雄

○英名 Blue-and-white Flycatcher 

○学名 Cyanoptila cyanomelana

○分類 スズメ目 ヒタキ科

○羽色
 オス成鳥は頭部から背まで体上面は光沢のある青色.翼は全体的に青く見えるが,開いた時に見える初列風切と次列風切の内弁は黒色.顔から胸および脇にかけて黒色で,腹部から下尾筒にかけて白色.尾羽は全体的に青色だが外側尾羽の基部に白斑がある.オスの青い羽は,濃い青から明るいコバルトブルーまで個体差がある.オス幼鳥はメス成鳥と似て茶色を帯びるが,翼や背から尾羽はオス成鳥と似て青味を帯びる. メスは全体的にオリーブ色がかった茶色.メスの腹部は白色で,胸は明るい茶色だが,その境界はオスのように明瞭ではない.

○分布
 日本では夏鳥として,南西諸島を除く九州から北海道までの全国各地で繁殖する.基亜種オオルリC. c. cyanomelana は日本,韓国,南千島で繁殖して,台湾と中国南東部(海南島),インドシナ,フィリピン,ボルネオで越冬する.亜種チョウセンオオルリC. c. cumatilis はアムール,ウスリー,中国北東部,北朝鮮で繁殖して,ラオス,ベトナム,フィリピンなどで越冬する.

○巣
 営巣場所として,日陰で湿気のある沢沿いの斜面を好む.巣は木の根元にできた隙間,薄暗い木の根元,岩壁などの屋根がある自然構造物,さらには建造物の屋根の下に巣を作る場合もある.巣作りはメスだけが行い,巣材には主にコケ類を用いて,落ち葉や根を混ぜてお椀型の巣を作る.巣の大きさは外径8~14cm,内径6~7.5cmで,深さ3.5~5cm,高さ5~12cm.軽井沢の森では,哺乳類の捕食者が簡単には接近できないような急斜面,コケ類の生える湿った岩崖,崩れやすい土崖など,滑りやすい斜面に巣を造る場合が多かった.

○抱卵・育雛期間・巣立ち率
 産卵期は5月から7月頃まで,抱卵日数は約14日間,育雛日数は約12日間,ヒナの巣立ち後に約10日間家族群を形成して雌雄共にヒナに給餌する.軽井沢の野外調査では,抱卵期間と巣内育雛期間はそれぞれ約13日間で,2013年に観察した5巣のうち,1巣は捕食されたが,4巣は巣立ちに成功した.

○オスの美しい青い色の羽
 美しいオスの青い羽の秘密は構造色にある.鳥類の羽色は,色素による色と構造による色に大別できる.色素による色は,文字通り羽に含まれる色素の色が見えている.構造による色は,羽の内部のナノ構造による光の散乱,回折,干渉などによって生み出される色だ.つまり,羽のナノ構造と光のコラボレーションによってできた作品なのだ.羽一枚を詳しく観察すると,中央の羽軸の両側に複数の羽枝(barb)が付いている.この一つの羽枝を光学顕微鏡で観察すると,羽枝を中心として両側に多くの小羽枝(barbule)が付いている.オオルリの青い羽は実際には羽全体がすべて青色ではなく,羽枝は青い色,小羽枝は黒色だということがわかった.この鮮やかな青色は,羽枝の内部のβケラチンのスポンジ構造における光の干渉性散乱などによって作られる.一方,小羽枝にはケラチン構造がなく,メラニン色素があるために黒色味を帯びている.この青い羽枝が数えきれないほど重なっており,全体的に羽をみると青くみえる.

◆その他掲載記事
 ・全長,自然翼長,ふしょ長,尾長,体重
 ・鳴き声
 ・生息環境
 ・繁殖システム
 ・卵
 ・食性と採食行動
 ・メスの鳴き声

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