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研究誌新着論文:八ヶ岳とその周辺におけるジョウビタキの繁殖状況と環境の特徴

バードリサーチニュース2018年7月: 1 【研究誌】
著者:植田睦之

「ヒッ ヒッ ヒッ」
 10月になると各地で聞かれるようになるこのジョウビタキの声で秋の訪れを感じる人は多いのではないでしょうか? そんな「冬鳥」のジョウビタキが,最近,日本で繁殖をするようなっています。八ヶ岳での記録を皮切りにに,山梨から岡山まで繁殖が確認されています。

 今回Bird Research誌に掲載された論文は,八ヶ岳でのジョウビタキの繁殖の現状とその営巣環境についてまとめたものです。


山路公紀・林 正敏(2018)八ヶ岳とその周辺におけるジョウビタキの繁殖状況と環境の特徴.Bird Research 14: A23-A31.

 

 八ヶ岳では,2010年6月に繁殖が確認され,その後8年間の経年調査の結果,64件の繁殖が確認されたそうです。これまでいるとは思っていなかったジョウビタキが注目されるようになった効果も当然あるものの,年々記録が増えていることから,ジョウビタキは定着して繁殖するようになり,その数も増加しているようです。

ジョウビタキの営巣した建物の利用状況。人が定住している建物は少ないにもかかわらず,ジョウビタキの利用割合は高い

 繁殖に利用された環境には,いくつかの特徴がありました。林地では繁殖せずに,別荘やリゾート施設で繁殖が記録され,その中では非定住家屋よりも定住家屋がより多く利用されていました。ジョウビタキもツバメのように,人を利用して安全な営巣場所を確保するなどしているのかもしれません。
 それに関連してか,営巣場所は,換気扇用フードなど,すべてが人工物でした。ただし,人工物であっても繁殖場所は林縁部に近く,ジョウビタキは林に依存しながらも人の活動と密接な関係を保つ場所で繁殖しているようです。

 海外のジョウビタキは,ロシアは日本の状況に近く,人工構造物で営巣することが多いのですが,中国ではおもに森林の林縁部で繁殖しているそうです。日本でも気づいていないだけで森林でジョウビタキが繁殖していたりするのでしょうか? ジョウビタキの声は,鳴き声図鑑でも聞くことができますので,やや標高の高い開けた森林に行かれるときはジョウビタキの声に注意して,お聞きになられましたら,ぜひご報告ください。

論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.14.A23