湿地に響く低く太い声。なかなか姿の見られないサンカノゴイの存在を教えてくれる声です。
この声をもとに渡良瀬遊水地のサンカノゴイの生息状況とその変化を明らかにした論文が掲載されました。
平野敏明(2018)渡良瀬遊水地における繁殖期のサンカノゴイ雄の減少.Bird Research 14: A13-A22.
栃木県南部の渡良瀬遊水地で2008年から2017年の3月下旬から6月の早朝に,サンカノゴイの声の有無を記録し,その変化を明らかにした研究です。
この調査の結果から,サンカノゴイの雄のさえずりの記録数は,調査開始当初は4-5羽いたのが,2013年以降は1-2羽に減少してしまったことがわかりました。また,これまでサンカノゴイは広大なヨシ原に住むと考えられてきましたが,雄の確認地点の滞水湿地の面積は,多くが2ha以下と狭いこともわかりました。
渡良瀬遊水地には1,500haの広大なヨシやオギの高茎植物が拡がっています。しかし,水の多いヨシ原は少ししかありません。そのため,サンカノゴイの生息地として適した場所はあまりなく,小さな滞水湿地で記録され,また数も減ってしまったのだと考えられます。
一方で,湿地再生事業で新たに掘削された池にできた滞水湿地ではサンカノゴイが1羽記録されるようになりました。池の造成が,新たなサンカノゴイの生息環境を創りだしたようです。
これらの結果は,今後のサンカノゴイの保全活動や湿地管理の参考になると思います。
論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.14.A13