バードリサーチニュース

研究誌新着論文:ドバトの羽色多型の地域差と経年変化

バードリサーチニュース2018年4月: 4 【研究誌】
著者:植田睦之

 給餌自粛の影響ですかね。最近ドバトを林の中で見かけます。キジバトさながらに落ち葉をひっくり返して食物を探していますが,ぼくが林に入るとドバトらしく物欲しげに足元に寄ってきます。足元のドバトを見下ろすと,いろんな色の翼をしています。この羽色の多型を調べた論文がBird Research誌に掲載されました。


室本光貴・三上 修(2018)ドバトの羽色多型における地域差と,新聞記事に見られる経年的変化.Bird Research 14: S7-S11.

 

「灰二引」と呼ばれる原種タイプのドバト.翼が灰色地で2本の黒線が入っているのが特徴

 ドバトには羽色に表現型多型が見られ,世界的に多くの研究が行なわれています。日本では1970年代に調査があるものの,その後は「東京のドバトはカラスのせいで黒くなった」といった記事が出たりはしているものの,きちんとした調査はありません。そこで,今回,室本さんと三上さんがドバトの羽色の地域差を東京と大阪で調べました。その結果,東京のドバトには灰二引と言われる原種タイプが少なく,また過去の新聞記事の画像をみると,年とともに灰二引が減っていることがわかりました。その理由は今のところわかりませんが,もう少し全国の広い範囲,様々な環境で調べたり,ドバトの供給源であるレース鳩の飼育者の羽色の好みの地域差やその「流行り」など調べたら,原因が見えてくるかもしれませんね。

論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.14.S7