バードリサーチニュース

研究誌新着論文:カラスバトの島間移動行動

バードリサーチニュース2017年11月: 1 【研究誌】
著者:植田睦之

八丈島に向かうために海岸に出てきた八丈小島のカラスバト(撮影 森 由香)


 朝7時半,毎朝ぼくは家を出ます。ジョウビタキの声を聞いたり,サギが採食する姿を見たりしつつ,多摩川のサイクリングロードをしばらく走ってから出勤するので,バードリサーチ事務所につくのは8時すぎになりますが,その気になれば,7時45分には事務所につくことができます。職住近接。ありがたいことです。
 海鳥のように島のコロニーから遠くの海域まで採食にいく鳥もいますが,鳥たちの多くも職住近接の暮らしをしています。特に陸鳥はそう。でもカラスバトは違うかもしれない,という論文が掲載されました。

安藤温子・森 由香・佐藤 望(2017)伊豆諸島八丈島と八丈小島におけるカラスバトの島間移動行動.Bird Research 13: S35-S40.

 安藤さんたちは伊豆諸島八丈島とその4km西にある無人島 八丈小島のあいだをカラスバトが移動しているという事前情報をもとに2017年7月1日に移動状況の調査をしました。その結果,のべ約2,000羽ものカラスバトが島間を移動していることを確認しました。八丈小島には1㎞あたり69.93羽(八丈島は1.54羽)と非常に高密度でカラスバトが生息していて,活発に繁殖行動をしていることもわかりました。安藤さんたちは人もおらず,捕食者も少ない八丈小島はカラスバトにとって好適な繁殖地で,八丈島に採食のために「出勤」しているのではないかと考えています。もしそうだとすると,非繁殖期には「出勤」はみられなくなって,生息密度も少なくなっているはず(非繁殖期は安心できるねぐらになっているということもありえますが)。今後の調査にも期待したいと思います。

論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.13.S35