毎年秋に開催しているバードリサーチ大会。今年はマガンの名所「宮島沼」がある美唄市で 9月30日に開催しました。参加者は約40名で、都市部で開催するときの大会ほど大勢ではありませんが、15名の皆さんから発表があり、いろんな話題を聞くことができました。
宮島沼水鳥湿地センターの牛山さんのお話によると、美唄市の宮島沼は、以前は狩猟が行われていたせいで、猟期にあたる秋の渡り時期にはマガンねぐらができなかったそうです。それが、湖底に沈んだ鉛弾を飲み込んだハクチョウやマガンが大量死する事件が1989年に起きたことから鳥獣保護区になり、いまでは秋に4万羽、春には7万羽ほどのマガンがねぐら入りするようになりました。しかし、マガンが増えるにつれて小麦の食害が問題になってきました。マガンの主食は稲の落ち籾ですが、牛山さんたちの研究によると、稲の刈入後に水田に残ったワラを取り除く農法が推奨されていて、それをすると落ち籾もなくなるためにマガンが餌不足になっています。麦は9月に種をまいて、マガンがやって来るころにちょうど芽が出ていますから、マガンは青々としておいしそうな麦畑にやって来るのではないかということです。対策としては、刈入後の水田で麦を育てて代替採食地を作って本来の麦畑にマガンが行かないようにすることや、ドローンを使った追い払い方法の効率化などに取り組んでいるということでした。
日本に飛来するマガンの数は増え続けています。宮島沼では夕方、沼に帰ってくるマガンを1時間以上かけてカウンターで数えますが、数日おきに行う調査には相当な労力と熟練の技が必要です。そこで調査の負担を軽減するために、宮島沼では北海道大学の山田浩之さんが、IT技術を使ってマガンカウントを自動化するシステムの開発に取り組んでいます。このシステムは魚眼レンズ付きのカメラを空に向けて数秒おきに自動撮影を行い、宮島沼にねぐら入りするマガンの数を自動的に数える仕組みになっています。昨年から実験を始めていますが、すでに牛山さんたちの調査に近い個体数を自動カウントできるまでになっていて、実用化に近づいているようです。自動カメラに写っているマガンの写真がこちらのホームページでご覧になれます。この技術は、カラスやカワウのねぐらで個体数をカウントするためにも利用できるかもしれませんね。カメラと画像解析システムは市販部品を組み合わせて作られており、材料費だけだと30万円ほどで作ることができるということでした。
上記も含めて、今回の大会では口頭発表8題とポスター発表7題がありました。発表要旨はバードリサーチのホームページでご覧いただけます。それでは、また来年のバードリサーチ大会で、お目にかかりましょう。