今月は2本の論文が公開されました。
関 伸一:先島諸島におけるアカヒゲの冬期の分布. Bird Research 12: A47-A54.
奄美以北で繁殖する亜種アカヒゲは先島諸島で越冬するものがいることが知られています。しかし,その詳細はよくわかっていません。そこで先島諸島の宮古島,石垣島,竹富島,小浜島,黒島,波照間島,西表島,与那国島におけるアカヒゲの冬期の分布を調べたのがこの論文です。これまで先島諸島でのアカヒゲの観察記録は少なかったのですが,今回の調査では,いずれの島でも越冬していることが明らかになりました。アカヒゲは冬期には地鳴きやさえずりの頻度が低く植生が密な場所を好むため,バードウォッチングや鳥類調査での発見率が低かったためと考えられます。地鳴きにも注意して探索すれば通常の観察での発見率を高められるのでは,とのこと。アカヒゲの地鳴きは以下より聞くことができますので,この冬,先島諸島に行かれる方は,ちょっとこの声が聞こえるか気にしつつ,観察してみてはいかがでしょうか?
地鳴き http://www.bird-research.jp/appendix/br12/12a05.html
論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.12.A47
姉崎 悟:愛知県篠島の鳥類. Bird Research 12: A55-A64.
愛知県の知多半島と渥美半島からほど近い篠島の鳥類の生息状況を2014-2015年に調べ,過去と比べた論文です。
調査の結果,コゲラとハクセキレイが新たに留鳥になったことがわかりました。これら2種は2000年代に愛知県本土でも留鳥としての分布域が拡がっていた種です。こうした分布拡大が少し遅れて島にも及んできたのではないかと考えられます。
論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.12.A55
Bird Research誌はPDFベースで発行していますが,鳥関係の研究機関や研究室への寄贈用として冊子体もつくっています。これを会員の方(普通会員以上の方)には実費でお分けしています。金額はまだ未定ですが1000円程度。ご希望の方は以下のページよりお申し込みください。
http://www.bird-research.jp/1_event/br.html
締め切りは12月末日です。