新緑がまぶしい良い季節ですね。駅ではツバメが,山ではカラ類が卵を抱いています。抱卵は鳥ならではの行動ですが,この抱卵温度がかなり重要だということがわかっています。この連載の76号で紹介しましたが,抱卵温度が低いと,ヒナの体重が軽くなってしまったり,免疫能力が低くなったりしてしまうのです。さらに,最近の研究で抱卵温度が低いと寿命も短くなってしまうことがわかってきました。
この研究を行なったのはノルウェーのBerntsenさんとBechさんです。飼育下のキンカチョウ Taeniopygia guttata の卵を孵卵器で孵し,その際に抱卵温度を通常の37.9℃,やや低めの37.0℃と35.9℃にセットしました。そしてそのヒナたちを2年半飼育し,抱卵温度と生存率との関係を調べたのです。すると,35.9℃と抱卵温度の低かったヒナたちは抱卵温度の高かったヒナよりも有意に生存率が低いことがわかりました。37.0℃と37.9℃では,2年半後の生存率には大きな違いはなかったのですが,37.0℃の方が若くして死ぬ個体が多いこともわかりました。なぜこのようなことが生じるのか理由はわかりませんが,アメリカオシ Aix sponsa では,抱卵温度が低いと免疫能力が低くなることがわかっているので(DuRant et al. 2011),それが初期死亡や寿命に影響するのかもしれません。
これだけ抱卵温度の影響が大きいとすれば,巣の保温性というのはとても重要な気がします。でも,保温性能のよい立派な巣を作る鳥ばかりではありません。キジバトやサギ類の巣は,隙間だらけの粗末な巣ですよね。これでは保温性が悪そうです。キジバトはカラスなどに捕食されることが多いので,子の将来のために立派な巣をつくるよりは直近の捕食機会を減らすために造巣期間を短くし,素早く繁殖したほうが良いのでしょう。ではサギ類は? スカスカの巣の方が,給餌の際にこぼれた餌が巣に溜らず下に落ちるという衛生のためためだったりして!?