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研究誌新着論文:繁殖期におけるサンコウチョウの羽広げ行動

バードリサーチニュース2019年11月: 1 【研究誌】
著者:植田睦之

 鳥の観察していると,その鳥が見たことのない行動をとって驚くことがあります。ぼくもツミを見ている時に,急にツミが目の前の地面に降りてきて,翼をひろげてうずくまってしまったのを見て驚いたことがありました。ハトの日光浴と似ているので,おそらく日光浴なのだと思うのですが・・・。藤井さんもサンコウチョウで変わった行動を観察し,それについて継続して観察してまとめたのがこの論文です。

藤井忠志・渡邊 治 (2019) 繁殖期におけるサンコウチョウの羽広げ行動.Bird Research 15: S7-S10.

 

羽を広げるサンコウチョウの雌と巣立ちビナ

 藤井さんたちは,2013年から岩手県でサンコウチョウの繁殖生態を調査しているのですが,その際に,翼と尾を広げ,身体を後ろにねじる今までにみたことのない行動を目撃しました。その後,気にしながら調査を続けたところ,2013年から2019年あいだに12つがいで15回,この行動が観察されたそうです。見られた時期は,巣立ち前後に集中していることもわかり,雄雌が単独で行なうことから,当初考えていた求愛行動ではなさそうだということもわかりました。また,観察者とヒナの距離が近い時にこの行動が観察されたことから,藤井さんたちは巣立ち雛を守るための威嚇行動などの可能性があるのではと考えています。巣からある程度離れて観察すれば,サンコウチョウは抱卵や給餌を警戒せずに行なっていたので,影響がないと思って観察を続けてきたけれども,一番警戒心が高まるこの時期にこういう行動を誘発してしまったことを考えると,これまでの観察はサンコウチョウへの配慮が不十分だったかもしれないとも藤井さんたちは考えています。
 この点は,鳥の調査をしているぼくたちも気にとめておかなければいけないことですよね。ツミも以前は警戒心が強かったので,ツミが警戒しないよう,かなり気をつけて観察していましたが,最近は人慣れしてきたので,散歩の人を装ったり,ベンチに座って動かないで観察するなど,ツミが警戒しないような気遣いは続けているものの,羽色などしっかり観察したい時など,以前と比べるけっこう無造作に見やすい場所に移動して観察してしまうこともあります。反省しつつ自分が大丈夫と思うより,もう少し気を使って観察した方が良いのだろうなと感じました。 

論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.15.S7

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