バードリサーチニュース

日中韓のガン・ハクチョウ越冬数比較と保護への課題

バードリサーチニュース2016年9月: 5 【論文紹介】
著者:神山和夫

今年もガンカモ類が渡ってくる季節になりました。私たちは日本へ渡ってくる鳥だけに関心を向けがちですが、東アジアのガンカモ類は、繁殖地のロシアと越冬地である日本・韓国・中国を行き来する渡り鳥です。お隣の韓国と中国の越冬状況はどのようになっているのでしょう? 最近、これら三カ国での個体数調査の結果をまとめて、東アジアで越冬するガン・ハクチョウ類の個体数を分析した論文が発表されました。私も著者のひとりとして日本の状況を執筆しているのですが、この論文をもとに、日中韓の越冬状況についてご紹介しましょう。

 

飛び抜けて多い日本の越冬数

%e6%97%a5%e4%b8%ad%e9%9f%93%e5%80%8b%e4%bd%93%e6%95%b0

図1. 2010/11年の日本・韓国・中国のガン・ハクチョウ類越冬個体数

私には意外だったのが、広大な中国の越冬数が少ないのに対し、面積としては狭い日本の越冬数がとても多かったことです(図1)。日本はマガン、ヒシクイ、オオハクチョウの越冬数が他の二国より突出して多く、コハクチョウの越冬数は二位ですが一位の中国と近い数でした。一方、サカツラガンとカリガネは、ほぼ中国だけで越冬しています。

日本や韓国に比べて中国は十分に調査ができていない面はありますが、中国について執筆したJiaさんやCaoさんは、これらの種は沿岸部には少なく、長江流域の湖沼の越冬地データが中国で越冬する全個体数に近い数字だと考えることができると述べています。日本だとハクチョウなどは小さな池でも見られますが、中国ではガンやハクチョウは自然保護区になっている大型湖沼周辺にいて、日本のように人家近くへはあまりやって来ません。また北にある黄河流域は凍結するため、南の長江流域が主要な越冬地であると考えることは妥当だと思います。韓国では、これらの種は日本と同じように農地で見られ、オオハクチョウへの給餌も行われるなど、人と距離の近い環境で生息しています。

 

越冬地間のつながり

この記事は有料会員限定です。ログインすると続きをお読みいただけます。

入会・会員区分の変更

参考文献

JIA, Q., KOYAMA, K., CHOI, C.-Y., KIM, H.-J., CAO, L., GAO, D., LIU, G. and FOX, A.D. (2016) Population estimates and geographical distributions of swans and geese in East Asia based on counts during the non-breeding season. Bird Conservation International. 1–21.
http://www.journals.cambridge.org/abstract_S0959270915000386

森口紗千子ほか (2012) マガンの遺伝的構造と標識個体の観察記録からみた生息地間のつながり. http://www.jawgp.org/anet/jg018b.htm

MaMing et al. (2012) Geese and ducks killed by poison and analysis of poaching cases in China. GOOSE BULLETIN. 15:2-11 http://www.geese.org/gsg/goose_bulletin/Goose%20Bulletin%20issue15.pdf