バードリサーチニュース

海鳥で気象・海象を測る

バードリサーチニュース2016年8月: 3 【論文紹介】
著者:奴賀俊光

 海面に浮いて休息するオオミズナギドリは、海流に流されるため、オオミズナギドリに装着されたGPSの位置データの軌跡から、その場の詳細な海流を知ることができます(Yoda et al. 2014)。このように、動物を利用した環境観測は、人間が行くことができない場所の情報や気象衛星では測定できない詳細な情報を得ることができる点で、新しい観測手法として期待されています。

 

クロアシアホウドリ。論文には登場しませんが、コアホウドリ等と同じように海上風を受けてはばたかずに飛翔します。

クロアシアホウドリ。論文には登場しませんが、コアホウドリ等と同じように海上風を受けてはばたかずに飛翔します。

 今回紹介するのは、海鳥の飛行速度と飛行方向から、海上風の詳細な風向風速を知ることができる、という論文です(Yonehara et al. 2016)。
 東京大学大気海洋研究所の米原さんたちは、小型のGPSロガーをオオミズナギドリ、コアホウドリ、ワタリアホウドリに装着し、1秒ごとの位置情報から飛行速度と飛行方向を算出しました。これらの海鳥は海上を吹く風を利用し、羽ばたかずに飛ぶことができます。その飛行速度は、風速と風向によって変化します。追い風の時に飛行速度は最大になり、向かい風の時には最小になると考えられるので、飛行速度の変化から海上風の風速と風向を推定しました(下のリンクから米原さんらの論文の図、Fig. 1を見ると、海上風推定のイメージがしやすいと思います)。こうして得られた風向風速のデータは、衛星によって計測された風向風速の値と有意に相関しました。

 

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引用文献

Yoda, K., Shiomi, K. and Sato, K. 2014. Foraging spots of streaked shearwaters in relation to ocean surface currents as identified using their drift movements. Progress in Oceanography, 122, 54-64.

Yonehara, Y., Goto, Y., Yoda, K., Watanuki, Y., Young, L. C., Weimerskirch, H., Boste, C-A. and Sato, K. 2016. Flight paths of seabirds soaring over the ocean surface enable measurement of fine-scale wind speed and direction. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 113 (32),  90399044.