バードリサーチニュース

自然についての直接体験と追体験の両方が、子供の環境保全意識に影響する

バードリサーチニュース2016年6月: 2 【論文紹介】
著者:神山和夫

幼少期に自然体験があった人は環境保全意識を持つ傾向にあるということが、欧米では多くの研究から示されているようです。読者の皆さんにも、子供時代に自然体験があったおかげで、自然観察を趣味にしていたり、自然を守りたいという考え方を持つようになったと感じておられる方は多いことと思います。

私自身も、幼少期の自然体験から大きな影響を受けたひとりですが、私は野外で自然に親しむより家にいるのが好きな子供でした。そして、テレビの野生動物番組を欠かさず見て、シートン動物記やドリトル先生物語を何度も読み返していました。

私が経験したようなタイプの自然体験は「間接体験」と呼ばれることが多いのですが、正確には「追体験」というもので、これは「他人の体験を、作品などを通してたどることによって、自分の体験としてとらえること(デジタル大辞泉)」という意味の言葉です。自然に対する直接体験と追体験は、子供の意識にどのような影響を与えているのでしょうか?

東京大学の曽我昌史さんたちは、東京都府中市の小学生(3~6年生)にアンケート調査を行い、この二種類の自然体験の両方が、子供たちの自然に対する愛着や、生物を守ろうという考え方に影響を与えていることを明らかにしました。

アンケート調査では、まず直接的な自然体験のレベルを測るため、①近所の自然がある場所に行く頻度、②その場所で植物をさわる頻度、③動物を観察したりさわったりする頻度の3つについて、4段階で答えてもらいました。そして、自然の追体験のレベルを測るために、①自然についてのテレビ番組を見たり本を読む頻度、②両親や友人と自然や動物について話す頻度を、やはり4段階で質問しました。

次に、子供たちの自然への愛着を調べるために、子供たちの身近で見られる16種類の生きものの写真を見せて、それぞれについて「好き・どちらでもない・嫌い」の3段階で答えてもらいました。さらに、生物多様性を守りたいという意欲を調べるために、この16種の生きもの各々について、「守りたい・どちらでもない・守りたくない」の3段階で質問しました。

これらのデータを分析した結果、子供たちの自然への愛着と生物多様性保護の意欲は、自然の直接体験と追体験の両方と正の相関があることが分かりました(図1)。

図1

図1 自然の直接体験・追体験の頻度、性別と、自然への愛着・保護の意欲の関係。縦軸は16種の生きものへの愛着と保護意欲の合計スコア。箱ひげ図の中央線は中央値。箱の上下は四分位数(データの1/4)の範囲。ひげの上下はデータの10%と90%の位置を示す。箱ひげ図のアルファベットはグループ間に有意な差がある(P<0.001)ことを意味する。 [当該論文の図を和訳して引用]

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引用文献
Soga M, Gaston K., Yamaura Y, Kurisu K & Hanaki K (2016) Both Direct and Vicarious Experiences of Nature Affect Children’s Willingness to Conserve Biodiversity. International Journal of Environmental Research and Public Health 13: 529.