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意外に役に立っていた「相互羽づくろい」 ~ 相互羽づくろいが寄生虫防除に役立っているカワラバト ~

野鳥の不思議解明最前線 No. 129 【野鳥の不思議】
著者:植田睦之
相互羽づくろいをするメジロ。首の羽づくろいをしているところに注目

相互羽づくろいをするメジロ。首の羽づくろいをしているところに注目。撮影:渡辺美郎


 鳥の求愛行動の1つに「相互羽づくろい」があります。つがい相手の羽づくろいをしてやる行動で,日本の鳥では,メジロやキジバト,ハシブトガラスなどで見られます。これ「つがいの絆を強める効果はあるのだろうけど,実利は無いんじゃない?」って思いませんか? 自分で行なう羽つくろいと比べたら,ちょっとしかしない行動ですし,儀式的な行動なんじゃないかと…。でも違うんです。寄生虫防除に通常の羽づくろい以上に役にたっているようだということがわかってきました。

 この研究を行なったのは,ユタ大学のVillaさんたちのグループです。彼らが飼育下のカワラバトを観察し,相互羽づくろいの頻度と寄生虫の数について調べたところ,相互羽づくろいの頻度が高いほど寄生虫の数が少ないという強い関係があることがわかりました。それに対して,自分で羽づくろいをする頻度と寄生虫の数には弱い関係しかありませんでした。つまり,自分でする羽づくろいよりも相互羽づくろいの方が寄生虫の防除に役に立っているようなのです。
 相互羽づくろいは全観察時間の2%程度しか見られず,頻繁に行なわれる行動ではありません。それにも関わらず,なぜ寄生虫の防除に役立っているのでしょう? それには寄生虫の生態が関係していそうです。寄生虫の幼虫は頭や首に集中しているそうです。頭や首は自分ではなかなか羽づくろいをできない場所で,足で引っ掻くことしかできません。相互羽づくろいはそんな場所に対して行なわれます。上の写真のメジロも首の羽づくろいしていますよね。自分では取り除くことが難しいこうした場所にいる寄生虫の幼虫を取り除くことができることで,寄生虫を減らすことができるのではないかとVillaさんたちは考えています。

 

紹介した論文
Villa SM, Goodman GB, Ruff JS & Clayton DH  (2016) Does allopreening control avian ectoparasites?  Biol. Lett. 12: 20160362.