今月,3本の論文が掲載され,11巻の論文7本がそろいました。
松原一男・三上かつら:青森県廻堰大溜池とその周辺地域におけるハクガンの飛来状況
以前は日本には稀にしか渡来しなかったハクガンとシジュウカラガンですが,野生復帰計画が成功して,近年その越冬数が急激に増えています。しかし越冬数が多くなって間もないこともあり,その渡り経路や越冬生態については十分な情報がありません。
この論文の報告から青森県の廻堰大溜池が秋期のハクガンの重要な中継地になっていることが明らかになりました。しかし,春はそれほどここを中継していきません。ハクガンはどのように渡り経路や中継地を決めているんでしょうね。今後の情報の蓄積により,そういったことも見えてくるかもしれません。
http://doi.org/10.11211/birdresearch.11.S9
上出貴士:和歌山県日高町の西川で観察されたコガモの潜水行動
水面採餌ガモといわれるAnas属のカモたち。水面や地表の食物を主に採っていて,水中の食物は水面で逆立ちして首が届くくらいの深さまでがおもな採食対象です。コガモもそんなカモの1種ですが,上出さんの観察では,普段はしない潜水採食が2011年の1-2月に頻繁に観察されたということです。この時,コガモに何が起きていたのでしょうか? 普段の採食地の食物が少なかった? 水深が深くて,「逆立ち」じゃ届かなかった? それとも普段来ない「潜水採食個体群」がたまたまやって来た? 今後の研究で原因を明らかにしてほしいと思いました。
http://doi.org/10.11211/birdresearch.11.S15
所崎聡・江崎正裕:鹿児島県トカラ列島平島におけるオオジュウイチの鳴き声の記録
トカラ列島平島でのオオジュウイチの鳴き声による観察記録です。カッコウ類は声による確認が多いので,この声を聞いて,覚える人が増えたら,今後各地での記録が増えるかもしれないですね。
http://doi.org/10.11211/birdresearch.11.S21