バードリサーチニュース

図書紹介:動物行動の観察入門

バードリサーチニュース2015年10月:2 【図書紹介】
著者:黒沢令子

動物行動の観察カバーS動物行動の観察入門
マリアン・S・ドーキンス著 黒沢令子訳 
白揚社 定価3,600円(+税)
A5判 224ページ 
ISBN 978-4-8269-0183-3 C3045


 鳥を見ていると,なぜ? とかどうやって? という疑問が浮かぶことがありませんか? カモメが干潟で,パチャパチャと足踏みをしていることがあります。 足踏みをすると餌が取りやすくなるのでしょうか? そんな行動の謎を解くためにはどうしたらよいかが本書を読むとわかってきます。


 この本はオックスフォード大学のマリアン・S・ドーキンスという行動学者が書いた行動研究の入門書です。著者は動物の行動を野外で観察するだけで,しかも対象の動物にいかに負荷をかけずに研究ができるか?という命題に長い事取り組んできました。(因みに著者はティンバーゲンの直弟子で,『利己的遺伝子』のリチャード・ドーキンスの元奥さんです。)
 観察するにあたっての計画の重要性を説いてあり,本書に従って計画を立てて行けば,アマチュアの方でも学部生でも,初めての観察研究を行ない,その結果をまとめることができるように書かれています。バードリサーチ誌やストリクス誌などに原稿を投稿してみようか? と考えている方にはまず一読をお勧めします。
 また,一度しか観察していないのにネイチャー誌に載るほどの評価を得られる観察と,何十回もくり返してデータを取らねばいけない研究の違いは何か? という点についての解説には,目から鱗が落ちるような思いをするのではないでしょうか。
 この本の主眼は動物の行動を観察することですが,人間(子供や大人)の行動観察,社会の観察など,応用範囲は非常に広いと思います。
 鳥や動物に興味があるといっても,眺めていれば満足とか,モフモフの鳥や動物を触るだけで癒やされて満足と思う人にはあまり向かな いかもしれません。一方,モフモフの鳥を見て,なぜモフモフな鳥とそうでない鳥がいるのだろう? 寒い所で生きていくためには必要なのだろうか? などと疑問を持ち,自分で調べてみたい人には向いているでしょう。
 興味をもった方は,書店でお手にとって,または広域の図書館に入れてもらって目を通してみてはいかがでしょうか。