バードリサーチニュース

日本鳥学会2015年度大会

バードリサーチニュース2015年8月号:2 【学会情報】
著者:高木憲太郎

今年の日本鳥学会大会は,9月18~21日,兵庫県立大学神戸商科キャンパスで開かれます.今回,バードリサーチのスタッフは下記の自由集会および口頭・ポスター発表を行ないます.ぜひ聞きに来てください.

 日本鳥学会2015年度大会のホームページ
http://www.stork.u-hyogo.ac.jp/osj2015/

 

自由集会

砂浜の絶滅危惧種シロチドリ,コアジサシの現状 / 奴賀俊光
絶滅危惧種のシロチドリとコアジサシの現状について情報交換を行ない,保全上の問題点について議論します.

カワウを通じて野生生物と人との共存を考える(その18
-河川における生息地環境管理- / 加藤ななえ

魚の隠れ場所を作ることや堰の魚道をちょっとした工夫で改良するといった魚の生息環境管理によって,カワウと人との軋轢を減らしていく展望について議論します.

口頭発表

キビタキの羽色が伝達する情報と繁殖地における機能 
○岡久雄二・佐々木礼佳・小西広視・高木憲太郎・森本元・上田恵介

キビタキのオスの若鳥の羽色は,成鳥と部分的に異なる.この羽色の機能について,富士山青木ヶ原において研究したところ,オスの年齢によって,異性間性選択と雄間闘争に影響する羽色が異なっていることが分かった.

日本からのアメリカコアジサシSternula antillarum の初記録
○茂田良光・藤井幹・佐藤達夫・小田谷嘉弥・奴賀俊光

2014年7月17~18日,茨城県神栖市須田浜海岸において,コアジサシの集結群を対象に夕方から翌朝にかけて霞網による捕獲を行った.コアジサシのほか,コアジサシより小さく,上面,下面とも灰色味が強く鳴き声が異なるアメリカコアジサシ2羽も捕獲された.

 ポスター発表

日本の鳥の今を明らかにする 全国鳥類繁殖分布調査
○植田睦之・葉山政治・中山隆治
1970年代と1990年代に環境省が行なった鳥類繁殖分布調査.1990年代以降も過疎化,気候変動,震災など様々な変化が起き,鳥にも大きな変化があると考えられます.そこで2016年から3回目の調査をすることになりました.

 オオルリとキビタキの初認時期の比較
○高木憲太郎
オオルリとキビタキは同じヒタキ科に属し,その生態は比較的似ている.両種の初認時期を調査したところ,オオルリの方が少し早く渡来していることが分かった.

 越冬期におけるカモ類の日本国内での性比と地理的傾向
○神山和夫・笠原里恵
2014年と2015年の1月にカモの性比調査を行なった.ホシハジロは北ほど,そして東ほど雄の割合が高くなる傾向があり,コガモも北ほど雄の割合が高くなる傾向があった.

セグロセキレイとハクセキレイにおける順位の変化について
○平野敏明

1980年代前半,宇都宮市の田川では冬期にセグロセキレイ雄→雌→ハクセキレイ雄→雌→キセキレイ→タヒバリという順位関係があった.しかし,2013年と2014年はハクセキレイ雄とセグロセキレイ雌の順位が入れ替わっていた.

 

 

市民科学によるカササギ分布調査:30年間持続の鍵は何か?
○黒沢令子・堀本富宏・平野敏明・長谷川理
バードウォッチャーの報告記録から,移入種カササギが北海道南部に定着し,拡散する様子がとらえられた.これは市民科学による長期モニタリングの成功例であり,市民科学が成功する条件を他の事例も合わせて考察する.

 

まちのなかで鳥がいる場所いない場所
○三上かつら・三上修

岩手県盛岡市の市街地において,繁殖期と非繁殖期に,それぞれどこにどんな鳥類種がいるかを調査した.繁殖期には31種が,非繁殖期には30種が確認された.鳥類種によって空間分布に違いがみられた.

オジロワシはなぜ風車に衝突するのか?
○谷口綾・島田泰夫・植田睦之

オジロワシのバードストライクの原因解明のために,監視カメラで衝突の瞬間の撮影を試みた.1例の衝突の撮影に成功し,それはオジロワシ2羽が追いかけあって飛行している際に,前の個体が風車に衝突したものだった.

 

神戸市西区一帯におけるヒクイナの生息個体数のモニタリング2 
渡辺美郎・平野敏明
2008年から兵庫県神戸市西区の明石川および同県明石市の農耕地の溜池で実施しているヒクイナの生息モニタリングの結果を報告する.明石川の生息数は減少傾向にあったが,農耕地の溜池では著しい変化はなかった.

 

越冬期におけるチュウヒの全国一斉個体数調査と長期モニタリングの試み
○多田英行・平野敏明
全国のチュウヒ研究者の協力のもと,2013年冬期から日本におけるチュウヒとハイイロチュウヒの越冬期の生息数モニタリングを実施している.今回は,調査への参加を呼び掛ける目的で2年分の調査結果を発表する.