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十勝平野の三日月沼にシジュウカラガン9千羽とハクガン2千羽がねぐら入り モニタリングサイト1000でドローンを使った空撮カウントを実施

バードリサーチニュース 2025年11月: 1 【活動報告】
著者:神山和夫

 北海道の十勝平野は秋と春にガン類の多くが中継地として利用する場所で、秋は10月、春は4月が渡りのピークになります。ガン類は水域を夜間のねぐらに使用するので、国内のガン類飛来地で個体数調査をするときはねぐらでカウントする場所が多いのですが、十勝平野ではガン類のねぐらがあまり把握できていません。そのため、モニタリングサイト1000ガンカモ類調査では餌場になっている十勝川流域の農地や牧草地でのカウントを行ってきました。

図1.三日月沼近くの牧草地にいるガン類(撮影 城石一徹)

図2.十勝川流域の農地・牧草地でカウントしたガン類の個体数

 今後はこの地域でもねぐらのカウントを行いたいと考えて、2024年秋からねぐらを探す調査もはじめました。採食地調査グループのまとめ役をしていただいている城石一徹さんからねぐらの可能性がある場所を教えてもらい、自動撮影カメラやドローンを使ってガン類の利用状況を確認をしています。この記事では浦幌町にある三日月沼(図3)のドローン調査を紹介しましょう。

図3.ドローンで撮影した三日月沼。手前にガン類が写っている。

 三日月沼はガン類が日中に休息することが知られていて、夜間のねぐらになっている可能性もありましたが、近くに調査関係者がいないため確認ができていませんでした。それが幸運なことに、沼の隣接地で農業をされている吉田水十華さんに協力してもらえることになったので、バードリサーチで使っているドローンの操縦を吉田さんに覚えてもらい、10月から日の出と日没時の空撮をはじめました。

図4.三日月沼を網羅するように48枚の写真を撮影した。(地図データ:©2025 Google)

 図4は、高度50mから撮影した写真を三日月沼に重ねている図です。四角いメッシュ状に並んでいるのがドローンで撮影した48枚の写真で、これらを1枚の画像に合成してAIソフトを使ってカウントします。図5は高度25mの写真で、シジュウカラガンとハクガンが写っています。カウント用の撮影は40~50mで行うのでこれより不鮮明な写真になりますが、高度が高いほど撮影時間が短くて済むため、種判別が可能な限界の高度から撮影を行うようにしています。もちろん、高度が高いほどガン類にプレッシャーを与えないということも大切なポイントです。シジュウカラガンの数は空撮を始めた10月上旬が最大で、約9,000羽でした。しかしシジュウカラガンの数が減り始めるとマガンが混ざるようになり、空撮写真では両種の識別が不完全なので継続したカウントはできませんでした。一方、真っ白なハクガンは識別に迷うことがありませんので、継続してカウントしたところ10月下旬に数が最大になり、約2000羽がねぐら入りしました(図6)。このあと11月4日の空撮ではハクガンがいなくなっていて、その後も三日月沼に戻りませんでした。吉田さんが11月5日に近隣の農場で約200羽を観察されているので、ねぐらが移動したのか、別のねぐらの群れなのか分かりませんが、これがこの秋に大きな群れを見た最後になりました。
 ドローンで調査をすると簡単に数が分かると思われるかもしれませんが、ガン類は10~15分ほどでねぐら全体を撮影しないと、朝は飛び立ってしまい、夕方は日が暮れます。そのため、ねぐらの位置が特定できて、その面積が狭い場合に利用できる方法です。ガン類でいちばん数が多いマガンはねぐら入りする範囲も広いため、短時間のうちにドローンで群れ全体を撮影することができません。今後はドローン調査と目視調査を併用しながら、この地域での調査を続けていきたいと考えています。

 ガンカモ調査でのドローンの利用と写真のカウント方法について、2026年2月1日(土)に予定しているモニタリングサイト1000ガンカモ類調査のオンライン講習会で解説をします。1月に予告サイトを公開しますので、すこしお待ちください。