バードリサーチニュース

鳥類学大会2025を開催しました

バードリサーチニュース 2026年1月: 1 【活動報告】
著者:高木憲太郎・植村慎吾・姜雅珺・藤原敦子

2025年12月12-13日に、バードリサーチ鳥類学大会2025を開催しました。今回は口頭発表枠が復活し、口頭発表8件、ポスター発表が24件ありました。参加者は355人でした。発表者・参加者の皆様ありがとうございました!

最優秀ポスター賞の紹介

最優秀ポスター賞は全てのポスター発表が対象で、参加者が最もおもしろいと思った発表に対して1票を投じました。その結果、最優秀ポスター賞を受賞したのは、太田佳似さんによる「鳥たちの気象防災講座(風力発電編)」でした!太田さんは鳥類学会2023、2024でも最優秀ポスター賞を受賞され、3年連続での受賞という快挙です。鳥類学会2023での台風編、2024での磁気嵐編に続いて、今回は風力発電編でのご発表でした。太田さんの発表ファイルは、鳥類学大会のページの「ポスター発表PDF(希望者の発表を公開)」の場所からご覧になれます。


太田さんからの受賞コメント

今回も、皆さんが様々な工夫を凝らして観察された貴重な結果をお聴かせていただき、とても有意義で楽しい時間を共有することができました。そんな中で、鳥と気象に関わる発表内容に、こんなにも多くの方々が関心を持って下さったことをとても嬉しく思います。本当にありがとうございました。昨年までに取り上げた「台風」や「磁気嵐」と違って「風力発電」の風車は人間がコントロール可能なものです。今回は「渡りの時期だけ風車の回転方向を制限する」という手法を検討しましたが、他にもいろいろな方法が考えられるはずです。日本だけでなく世界中の人々にとって大切なエネルギー問題であり、良い方法をみつけて、鳥たちとの共存が図れるよう、これからも皆さんと一緒に考えて行ければと思います。懇親会も含め、今回も皆さんから有益なご意見やご提案を頂くことができました。ここで学んだことを活かして、これからも頑張って行きたいと思います。みなさん、本当にありがとうございました。


太田さんの発表スライドより

太田さんは鳥類学大会2024での磁気嵐編の内容を、秋に開催された気象学会でポスター発表されたそうです。1時間のコアタイムだったところ、2時間以上休みなく聴衆が来る人気だったとのこと。気象学会での発表の様子とポスターはこちら(pdf直リンク https://www.meci.jp/pdf/2025110701.pdf)。今回の鳥類学大会でも、発表時間や懇親会で、いろいろな意見交換ができて良いアイデアもたくさんわいたそうです。参加された皆さんありがとうございます!

 

ヒマラボ賞1位と2位の紹介

鳥類学大会には2020年から一般社団法人ヒマラボに協賛していただいています。ヒマラボは「空いた時間に研究的な活動をして小さな知的生産を愛でよう」という思いで、気軽に研究活動に取り組む市民を支援しています。参加者がそれぞれの興味で行った研究活動を、代表の森田さん(福岡大学商学部教授)が職業研究者として支えています。鳥類学大会では、ヒマラボの理念と共通する、気軽な研究活動にスポットライトをあてようということでヒマラボ賞を設定しています。発表を聞いた参加者が、自分も鳥の研究に取り組んでみたいなと思った研究を1つ選んで投票し、1位と2位を表彰しました。発表者が仕事や学業、家事をしながら空いた時間に取り組んだ調査や研究、研究者がメインテーマとは別にちょっとやってみた研究などが対象です。

今年のヒマラボ賞1位は、佐藤悠子さん(新潟県愛鳥センター)による「野鳥の識別技術を持たない人はどのように種を認識し識別しているのか」でした!

佐藤さんは傷病鳥獣の救護施設で働いておられ、傷病鳥獣の連絡や問い合わせが日々あるそうですが、鳥に詳しくない人からの連絡では、誤同定が多くあるそうです。傷病鳥に関する連絡を受けた際に、誤同定であった場合の記録をためて、鳥に詳しくない人がどのように種を認識し、表現するのかを検討した内容です。

佐藤さんの発表ファイルも、鳥類学大会のページの「ポスター発表PDF(希望者の発表を公開)」の場所からご覧になれます。


佐藤さんからの受賞コメント

この度は、ヒマラボ賞に選んでいただき誠にありがとうございました。投票してくださった皆様に感謝申し上げます。

今回の発表内容は、「誤同定」という、私自身がとても面白いと思っているテーマではありましたが、データが溜まってきて何か形にしたいものの、これをどうまとめたら良いのか、そもそも、こんな変な内容で発表して良いのだろうかと、申込み前にしばらく悩みました。

仕事で鳥獣に関する様々な問い合わせに対応しますが、その中で、わからない人の視点を理解することはとても大切だと思うようになりました。発表の中でも言ったように、問い合わせは、普段野鳥に接していなかった人が野鳥や自然への興味を持つきっかけになるかもしれません。興味を持つ人が増えれば、地域の自然を守る力になるかもしれません。今回、こういった視点の部分に複数の方から共感していただけ、大変嬉しく思いました。

私は、「傷病鳥獣から得られる情報を保全につなげること」を信条の軸としていますが、今回のような副産物的なデータも含め、あらゆる情報を活かせる可能性があると改めて感じることができました。今後の励みになります。ありがとうございました!


佐藤さんの発表スライドより

そして、ヒマラボ賞2位は、太田佳似さんによる「鳥たちの気象防災講座(風力発電編)」でした!なんと、最優秀ポスター賞に続いてのダブル受賞です。


太田さんからの受賞コメント

ずっと憧れていた「ヒマラボ賞」に、皆さんのご投票で選んでいただき、本当にありがとうございます。ものすごく嬉しいです!頂いたヒマラボ賞は『発表を聞いて「自分でも空き時間にやってみよう!」と意欲をかき立てられた発表』とのこと。ぜひ「鳥たちと気象との関係」へのご興味を一歩進めて「気象」というビッグデータを存分に駆使していただき、様々な研究や観察に活かして貰えればと思います。「これって気象が関係してるのかな?」「こんな気象データが見たいけど、どこにあるのだろう?」といったお話がありましたら、ぜひ、お声がけください。この度は本当にありがとうございました。



主催者としても、ヒマラボ賞がすっかり定着して、こうして鳥類学大会参加者に研究をやってみることへの意欲をかき立てていることを嬉しく思います。ヒマラボ賞があるから発表を申し込んだという言葉も会場で聞きました。ぜひ来年は、何かテーマを決めてデータをためたり図を書いたりしてみて、成果を鳥類学大会に持ち寄ってください!バードリサーチ会員の方は、テーマ決めや方法で悩んだらぜひ相談していただければと思います。

 

発表ピックアップ紹介

発表者から発表内容を公開しても良いと申し出のあった発表を公開しています。鳥類学大会のページの「口頭発表YouTube(希望者の発表を公開)」「ポスター発表PDF(希望者の発表を公開)」の場所から内容をご覧になれます。そのうちいくつかの発表をピックアップして紹介します。

口頭発表

球磨川河口におけるシギ・チドリ群集の季節/年変動
○髙野茂樹
2022年1月~2024年12月に球磨川河口干潟で観察したシギ・チドリ類総個体数や種の変動傾向をまとめた発表です。春の渡り期、秋の渡り期、越冬期のそれぞれでシギ・チドリ類の群集の組成がことなり、種が入れ替わる様子がよくわかります。

ポスター発表

なぜ野鳥は羅網してしまうのか/事故DBの分析による原因報告
○内田理恵(a-tori-net Project)
ハス田ではカモ類やバン、オオバンによる食害が問題になっており、対策として防鳥ネットが多く導入されています。その防鳥ネットに鳥が絡まってしまい、命を落とす例は後をたちません。内田さんは以前からこの問題に取り組んでおられ、実際にどういうふうに鳥が絡まるのか、データを収集してこられました。発表では個別の事例を紹介しつつ、網のどこに鳥の体がどのように絡まったのか、絡まる鳥の大きさと網目の大きさはどのような関係がありそうなのかをまとめて検討されました。

市民参加型NFC録音調査の中間報告:運用実績と技術・参加継続の課題
○大坂英樹(トリルラボ) 田米希久代(加賀市鴨池観察館) 櫻井佳明(加賀市鴨池観察館)
ツグミの仲間やホオジロの仲間は、秋の夜に鳴き声を発しながら渡ります。この声を録音、識別、計測することで、渡りの時期や時間などを把握できる可能性があります。大坂さんたちは調査研究支援プロジェクトの支援も受けて、2024年より全国の協力者とともに録音調査を開始しました。この発表では、29サイト、総録音時間16,000時間に達したこれまでの実践から得られた運用課題を整理しました。録音機材の設定や音源取り出しの煩雑さを減らして参加者の意欲を維持することが課題として見えてきています。

大坂さんたちは秋に札幌で開催された日本鳥学会2025年度大会でもこの内容を発表されています。

来年も鳥類学大会を開催すると思います。調べてみたいテーマがある方はぜひ、データをとってみて持ち寄ってください!