一次審査を経て、10件の調査研究プランが決まりました
2022年9月~10月に支援先となる調査研究プランの募集を行ない、15件の調査研究プランが集まりました。その中から支援先を決定するため、上田恵介立教大学名誉教授、金井裕日本野鳥の会参与、出口智広兵庫県立大学准教授、水田拓山階鳥類研究所自然誌・保全研究ディレクター、植田睦之バードリサーチ代表の5名で一次審査を行ない、9件が選定されました。この9件にバードリサーチからの1件を加えた10件の調査研究プランが今年度の支援対象となります。
支援(寄付&投票)対象に選ばれた調査研究プラン
今年は、不思議な繁殖生態の解明を目指す研究のほか、謎に包まれた渡りに迫るもの、基礎生態や生息状況の調査、長期的な鳥類相の変化を追うものなど、さまざまな調査研究プランが支援対象に選ばれましたので、ご紹介いたします。どの調査研究プランも魅力的なものです。まずは下記の紹介文をお読みいただき、より詳しく知りたいと思う調査研究プランがありましたら、タイトルをクリックして調査研究プランのPDFをご覧ください。
ホームページには10件分全部をまとめたPDFもあります。
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001 モテる雄は冬に頑張る!?
-ミソサザイの雄の非繁殖期のなわばりが繁殖成功に与える影響の解明-
惣田彩可(京都大学動物行動学研究室 修士課程2年)
惣田さんはミソサザイのオスの中に、冬季も繁殖地の渓流に居残る個体がいることに着目し、冬の間もなわばりを維持するのは、より多くのメスとつがいになるためではないかと考えました。この仮説を検証するため、標識して冬から春までなわばりの変化を追跡し、つがいになったメスの数や巣立ちヒナ数などのデータを取り、冬の間も山地の渓流に残ったオスと下山したオスの間で違いを調べる計画です。
002 世界最北のカラスバト?!-その基礎生態の解明に向けて-
小峰浩隆(山形大学農学部)
カラスバトは主に関東以西の島嶼で繁殖している鳥です。山形県の飛島でも生息が確認されていますが、他の繁殖地に比べ緯度が高く、距離も離れています。小峰さんは音声レコーダーと自動撮影カメラを用いて生息密度を調べ、環境や季節による変化を捉え、飛島での生息実態の解明を目指します。果たしてこの島でカラスバトは繁殖しているのでしょうか?
003 新発見の連続-夜に渡る鳥のカウント-
原星一
原さんによる夜渡る小鳥の観測調査は、昨年度に引き続き今年度も支援対象になりました。街灯などの明かりに照らされた鳥を撮影することで種の識別を行う手法は画期的で、他の場所への展開に向けた手法の確立や、年変動の把握のための精力的なデータ蓄積に加え、今年度は月の満ち欠けによる個体数の変化や飛翔高度の変化の解明にもチャレンジします。2022年の速報では、マミチャジナイとアオジがそれぞれ3千羽以上記録されています。今度はどんな発見があるでしょうか?
004 秋田県におけるイヌワシの生息実態調査
秋田猛禽類調査グループ(ARSG)
生息状況を日々記録する調査は、すぐに目新しい成果が得られるわけではありません。でも、地道に記録を蓄えて行くことで、将来、鳥類の生態の解明や保全に大きな力となります。秋田猛禽類調査グループの調査研究プランはそんな調査のひとつです。イヌワシを対象に、毎月の定点調査に加え、学生や地元の自然保護団体などにも呼びかけて合同調査を行い、参加者を増やしつつ、既知のペアの行動圏や繁殖生態の解明、調査不足地域のイヌワシの生息の有無を明らかにしていきます。
005 森の時空間的変化に対する鳥の反応-30年で鳥はどう変わる?-
柴山潤太(名古屋大学農学部4年)
日本の国土の7割を占める森林、その半分弱が針葉樹の人工林です。かつては管理された一様な針葉樹の森でしたが、近年は広葉樹が混ざる針広混交林が増えてきています。それによって、鳥たちはどんな変化を見せるでしょうか?柴山さんは、様々なタイプの針広混交林に替ってしまった名古屋大学の演習林で、ラインセンサスと録音調査を行い、森林タイプ間での比較と、一面針葉樹の人工林だった30年前の調査との比較によって、この問いへの答えを見い出します。
006 湿地の茂みに隠されたヒクイナのごはん事情
-DNAメタバーコーディング解析に基づく餌組成の解明-
大槻恒介(長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科)
準絶滅危惧種のヒクイナ。彼らは湿地の草の陰で、何を食べているのでしょうか?捕獲した個体の糞やロードキル個体の胃からたくさんの甲虫の破片を見つけた大槻さんは、彼らの食性を明らかにすることが保全の上で重要だと考えました。胃内容と糞中DNAの増幅断片量の比較を行い、DNAメタバーコーディングの有効性を検証した上で、糞中DNAから彼らの食性を明らかにする計画です。
007 フクロウの夜の営みを声から暴く!?-ダイトウコノハズクの交尾研究-
金杉尚紀1・佐々木瑠太1・澤田明2(1.北大・院理 2.国環研・学振PD)
ダイトウコノハズクが交尾の際にぴりりりりと特徴的な声を出すことに着目した金杉さんたちは、この声を録音することで交尾頻度を調査しました。すると、産卵の1か月以上前から頻繁に交尾をしていたのです。この早い交尾は、子孫残すことに寄与するのでしょうか?それとも、交尾によってつがいの絆が深まり、オスによる給餌が引き出されるのでしょうか?この調査研究プランでは3つの仮説を立てて、交尾頻度の変化や孵化率、給餌頻度などを調べ、早い時期の交尾の謎を明らかにしていきます。
008 STOP「#アオシギいない」!-アオシギの保全のための
越冬地での行動範囲、渡りルートと繁殖地の解明-
細谷淳1・田谷昌仁1,2・竹田山原楽1,2
(1.日本鳥類標識協会 2.東北大学生命科学研究科)
山間部の渓流や湿地に冬鳥としてやってくるアオシギ。発見が難しいこの鳥の越冬生態は謎に包まれています。細谷さんたちは捕獲方法を確立したことで、この鳥の生態の解明の糸口を掴みました。この調査研究プランでは、再捕獲不要な小型のGPSロガーをアオシギに装着して、越冬地での行動を追跡し、得られた情報をもとに効果的なモニタリング方法の確立を目指します。また、繁殖地の特定や渡りルートの解明も合わせて行う計画です。
009 繁殖のお手伝い?リュウキュウオオコノハズクのヘルパーの謎に迫る
江指万里(北海道大学・理学院)
江指さんは、これまでの調査によって、亜種リュウキュウオオコノハズクでは、オスがヒナの餌を運ぶ役割を一手に引き受けていること、約3割もの巣にオスのヘルパーがいることを発見しました。繁殖を手伝う理由は何でしょうか?樹洞が貴重なので後釜に収まる狙いがあるのか、はたまた手伝っているペアと血縁関係にあるのか?この調査研究プランでは、足環標識したヘルパーオスのその後を追跡したり、DNAをもとに繁殖ペアとの血縁関係を調べ、ヘルパーが存在する理由を明らかにする計画です。
010 イワヒバリが生息するすべての山を明らかに!
バードリサーチ
高山帯の岩場で繁殖するイワヒバリは、果たして全国に何羽いるのでしょうか?バードリサーチでは、登山者の目撃情報を集めて、イワヒバリが生息する山の特定を進めています。この調査研究プランでは目撃情報をもとに、この鳥が生息する可能性のある山を割り出し、会員参加による現地調査によって、生息するすべての山を明らかにします。合わせて全国の個体数を推定するために、群れが連続的に分布する連峰と、そうではない独立峰のそれぞれに合わせた個体数調査の方法を検討します。
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このプロジェクトは、皆さまの投票とご寄付によって成り立っています
ぜひ、頑張る調査者や研究者たちにお気持ちをお届けください。
調査研究支援プロジェクトでは、みなさんから寄付を募り、それをもとに鳥の調査や研究に対して支援を行ないます(図)。寄付していただく際は、応援したい支援先を選ぶことができます。鳥類の調査・研究をみんなで支え合いながら、発展させていける仕組みになればと思っています。ご協力、よろしくお願いいたします。
寄付&投票の方法は次の2通りです
クレジットカードで寄付を送る場合
下記のホームページをご覧ください.
http://www.bird-research.jp/1_event/aid/kifu-a.html
銀行または郵便局から寄付を送る場合
Step1.メールする.
次の情報を高木( br@bird-research.jp )宛てにメールでお伝えください.
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・お名前とご住所
・寄付口数
・支援する調査・研究プランと投票数
・あなたのお名前を支援先に伝えて良いかどうか
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Step2.お金を振り込む.
下記のホームページに掲載されているいずれかの口座に合計額を振り込んでください.
(振り込み手数料はご負担ください.)
http://www.bird-research.jp/1_event/aid/kifu-b.html