2022年9月15日,ゴイサギとバンが狩猟鳥獣の指定から解除されました。この2種が狩猟鳥獣でなくなったのは,全国鳥類繁殖分布調査で,顕著に減少していることが明らかになったからです。
減少しているゴイサギとバン
バードリサーチが事務局となって2016年から2021年にかけて実施した全国鳥類繁殖分布調査では,2000人以上の調査参加者の力,そして多くの機関・基金の支援で,日本の繁殖鳥類の分布を明らかにすることができたとともに,過去の調査結果と比較することで,減少している鳥がわかってきました(植田・植村 2021)。減少率の大きかった上位10種の中には,現在狩猟鳥獣であるゴイサギとバンが含まれていました(表1)。ゴイサギは1990年代は236コースで6197羽が記録されましたが,2010年代は93コースで738羽と大きく減少しました。バンは87コース202羽が42コース84羽といずれも半分以下に減っていました。
狩猟鳥獣からの解除
ゴイサギだけでなく,ほかの小型・中型のサギ類も減少していたこと,バンやサギ類だけでなくタマシギや,サシバ,ツバメやスズメなど湿地や農地に生息する様々な鳥も減少していたことから,減少の主原因は,狩猟ではなく,生息環境の悪化だと思われます。それでも狩猟が減少を後ろから一押ししてしまうことは確かでしょう。そこで,ちょうど狩猟対象種の見直し作業が行なわれていたので,日本野鳥の会と一緒に,環境省の担当部署へ,ゴイサギとバンの現状を伝えるとともに,狩猟対象種からの解除を提案しました。そして,関係者へのヒアリング,専門家による審議やパブリックコメントを経て,2022年9月15日,ゴイサギとバンが狩猟鳥獣の指定から解除されることになりました。
繁殖分布調査とは関係ありませんが,今回の改定では,ほかにも鳥関係の変更がありました。それはカモ類の狩猟期間の変更です。これまで青森県,秋田県,山形県のカモ類の狩猟期間は,ほかの本州以南の地域よりも15日早かったのですが,暖冬や少雪の影響でカモ類の渡来・渡去の時期が変わってきたこともあり,今回の改定で,ほかの地域と同じ11月15日から2月15日になりました。また,ヤマドリとキジの雌の捕獲,小笠原,奄美,沖縄でのヒヨドリの捕獲の禁止が延長されました。
レッドリストへの反映も
今回,全国鳥類繁殖分布調査の調査結果が狩猟鳥獣の変更につながりましたが,それ以外に,現在改訂が進められているレッドリストへの情報提供も行なっています。表に示した種のうち,コアジサシとハイタカは,すでに環境省版のレッドリストに掲載されていますが,それ以外の種は掲載されていません。それらの種については,現在,調査結果をもとに,レッドリストへの掲載が妥当かについての検討が進められていますし,コアジサシやハイタカについても,現在のランクの妥当性の検討が進められています。
全国鳥類繁殖分布調査の調査結果がさまざまな自然保護施策に使われていくよう,今後も情報提供,結果の解析を進めていきたいと思います。