鳥類の調査や研究の発展を願って2011年度から開始した調査研究支援プロジェクトですが、山あり谷あり。調査研究プランの応募が少なくて心配になる年もありました。今年度は感染症が拡大したことで、実施しづらい調査や研究もある中、バードリサーチらしい市民参加型の調査や学術的な研究が集まりました。
ぜひ皆さまにご支援をお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。一次審査を経て支援対象に選ばれた10件の調査研究プランをご紹介します。皆さまにご支援いただくことができる調査や研究がひとつでも多くあればと願っています。
一次審査を経て、10件の調査研究プランが決まる
2020年9月~10月に支援先となる調査研究プランの募集を行ない、13件の調査研究プランが集まりました。その中から支援先を決定するため、上田恵介立教大学名誉教授、金井裕日本野鳥の会参与、出口智広兵庫県立大学准教授、水田拓山階鳥類研究所保全研究室長、植田睦之バードリサーチ代表の5名で一次審査を行なったところ、9件が選定されました。この9件にバードリサーチからの1件を加えた10件の調査研究プランが今年度の支援対象です。
支援(寄付&投票)対象に選ばれた調査研究プラン
今年は、市民参加型の調査研究プランが多く支援対象に選ばれました。その他にも、鳥たちの保全に関するものや、体の機能、災害と鳥の進化、音声による自動識別技術の開発など様々な切り口から調査や研究に取り組もうとする調査研究プランが選ばれています。下記の概要をお読みいただき、より詳しく知りたいと思う調査研究プランがありましたら、タイトルをクリックしてPDFをご覧ください。
ホームページには10件分全部をまとめたPDFもあります。
*************************************************************
001 蓮田の防鳥ネット有効性(無効性)の検証,野鳥の羅網死をなくすために
境友昭([公財]日本鳥類保護連盟)
境さんは、蓮田で羅網死している鳥が内側から引っかかっていることから、侵入を防ぐ目的の防鳥ネットが、本来の機能を果たしていないのではないか、と考えました。そうであれば、ネットの敷設は農家の負担でしかありません。この調査研究プランでは、主な対象を昼行性のサギ類とオオバンとして、蓮田への侵入経路などの行動と蓮田の対策状況や収穫の段階との関係を調べます。
002 世界遺産平城宮跡で寝るツバメはどこから集まってくるのか
- 6万羽のねぐら入りルートを探る -
奈良ツバメねぐら研究部 (岩井明子・西田好恵・三輪芳己)
奈良県の平城宮跡のねぐらに集まるツバメの個体数は2010年代前半に増加し今では6万羽にもなるそうです。奈良ツバメねぐら研究部では周辺の他のねぐらの消滅が背景にあるのではないかと考え、どこからツバメが帰ってくるのかを調べています。この調査研究プランでは、大勢の参加を得ながら多地点で帰還するツバメの飛行ルートを調べ、その実態を明らかにしていきます。
003 20年に1度の大型台風直撃!生き延びたのは誰?
- ダイトウコノハズクの台風対策 -
中村晴歌(北大・理学部4年)・熊谷隼(北大・理学部4年)・澤田明(北大・理学院博士3年)
2020年9月に亜種ダイトウコノハズクが繁殖する南大東島を台風が直撃しました。中村さんたちは、定期的に台風が直撃する島に生息する鳥類の進化には、台風が関わっているのではないかと考え、その影響を明らかにしようとしています。台風の影響が短期的なものなのか、長期的なものなのかを調べ、年齢や体サイズ、縄張りの質などと生存確率を比較し、台風と進化の関係を紐解いていきます。
004 鳥の翼の動かし方と機能
小林遥香(千葉大学理学部生物学科4年)
スポーツマンの体の動きを捉える方法として、関節などに目印をつけて動画で撮影し、動きを解析する番組をテレビで見たことがあると思います。小林さんは「関節の動き」に注目し、鳥の翼の形状と飛翔スタイルの関係を明らかにしたいと考え、さまざまな分類群の鳥の標本を用いて、その翼の関節に印をつけて静止画や動画で撮影し、形状や関節の可動域などを数値化して分析することで、翼の形状の進化を明らかにしようと計画しています。
005 ヤンバルクイナの鳴き声収集と環境音からの自動識別
森下功啓(熊本高等専門学校)
録音した音源から自動的に鳥の声を抽出して識別できたらどれだけ良いでしょう?教師データ(鳴き声の音源と鳥の名前の組み合わせ)をたくさん用意することで、コンピューターに学習させて識別できるようにしようという取り組みは、まだ上手くいった例がありません。森下さんは、ヤンバルクイナを対象に、対象種の鳴き声のほか、環境音についてもたくさん録音し、識別できるソフトの開発を目指しています。
006 潜水性鳥類はマイクロプラスチックに汚染されているのか
徳長ゆり香(日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科4年)
海洋汚染を起こしているマイクロプラスチック(MPs)が、沿岸域の海底に多く沈降しており、貝類がたくさん取り込んでいるのではないかと考えた徳長さんは、潜水性鳥類がMPs に汚染されているのではないかと考え、その実態の解明に取り組もうとしています。この調査研究プランでは、混獲されて死亡したクロガモなどの死体を収集し、消化管内や臓器からどれくらいMPs が検出されるか調査する予定です。
007 もっといるんじゃない? 北海道の繁殖鳥類
- ジョウビタキとオオムシクイの繁殖確認調査 -
土屋尚(Eureka!北海道)
全国鳥類繁殖分布調査に参加する中で土屋さんは考えました。面積が広く、夏鳥の中には大陸から直接渡ってきている鳥がいる北海道には、人知れず繁殖している鳥種がいるのではないか?と。北海道で繁殖している鳥種を明らかにしていく活動の手始めとして、この調査研究プランでは日高山脈において、ジョウビタキやオオムシクイの営巣確認やその生息環境を明らかにすることを目指します。
008 地域のみんなでアカモズを守る!
- 市民科学と保全生態学への挑戦 -
青木大輔(北大・院理)・赤松あかり(北大・院理)・松宮裕秋(信大OB)・原星一(信大OB)
急激に分布が縮小したアカモズが長野県のリンゴ畑で繁殖していることを見つけ、調査を続ける中で農家の方たちとの関係を築いてきたアカモズ研究者チーム。この調査研究プランで青木さんたちは、調査範囲を広げ、より多くの農家の方にアカモズのことを知ってもらうために、農家の方に配るパンフレットの作成や、アカモズの巣を見つけた農家の方が簡単に報告できるシステムの構築を進めます。
009 伊豆諸島で繁殖しているツバメをしらべよう!
重原美智子
重原さんは小笠原諸島や伊豆諸島で観察されるツバメがどこからやってくるのか?島ごとの初認日を島に住む方たちの協力を得ながら調べることで明らかにしてきました。しかし、渡来したツバメがそのまま定着して繁殖しているのか、通り過ぎているだけなのか、何つがい繁殖しているのか、どんな環境で繁殖しているのかなど、まだわかっていない繁殖について明らかにしようと計画しています。
010 ムクドリが好むねぐら環境の調査
- ヒトとムクドリの共存を目指して -
バードリサーチ
ムクドリはどんな環境をねぐらに選ぶのでしょうか?全国からねぐらの情報を集め、環境データと比較することで、彼らが好むねぐらの条件を明らかにしようとする調査研究プランです。駅前のねぐらは追い払われることがありますが、追い払うだけではなく、軋轢が起きない場所にムクドリたちを誘導できるようにしていきたい、ぼくらはそう考えています。
*************************************************************
このプロジェクトは、皆さまの投票とご寄付によって成り立っています
ぜひ、頑張る調査者や研究者たちにお気持ちをお届けください。
調査研究支援プロジェクトでは、みなさんから寄付を募り、それをもとに鳥の調査や研究に対して支援を行ないます(図)。寄付していただく際は、応援したい支援先を選ぶことができます。鳥類の調査・研究をみんなで支え合いながら、発展させていける仕組みになればと思っています。ご協力、よろしくお願いいたします。
寄付&投票の方法は次の2通りです
クレジットカードで寄付を送る場合
下記のホームページをご覧ください.
http://www.bird-research.jp/1_event/aid/kifu-a.html
銀行または郵便局から寄付を送る場合
Step1.メールする.
次の情報を高木( br@bird-research.jp )宛てにメールでお伝えください.
———————————————————————————————
・お名前とご住所
・寄付口数
・支援する調査・研究プランと投票数
・あなたのお名前を支援先に伝えて良いかどうか
———————————————————————————————
Step2.お金を振り込む.
下記のホームページに掲載されているいずれかの口座に合計額を振り込んでください.
(振り込み手数料はご負担ください.)
http://www.bird-research.jp/1_event/aid/kifu-b.html