ヨシ原に潜んで暮らすシマクイナ。ひっそり暮らし，その存在を認識することが困難だったからでしょうか，これまでは日本には迷鳥や不定期に渡来する鳥だと考えられていましたが，関東では意外に普通に越冬していることがわかってきました。このシマクイナの茨城での生息状況を調べたのがこの論文です。
福田篤徳・小田谷嘉弥・白川浩一・白川浩子・小澤重雄・今井光雄・深川正夫・梅垣佑介・山口恭弘（2019）茨城県におけるシマクイナの生息状況．Bird Research 15: A1-A14.
図１ 調査中に撮影されたシマクイナ
2016年1月から2018年5月にかけて，茨城県内の12地域でプレイバック法を用いて調査を行なったところ，7地域においてシマクイナと思われる声が確認できました。声紋の解析や鳴き声が発せられた場所から飛び出した鳥の特徴（図1）から，これらの記録がシマクイナであることが確認できました。そして，1か所では，冬期3シーズンにかけて8-15羽/haという高い個体密度で安定して越冬していることもわかりました。通年調査を行なった結果，茨城県では11月上旬から4月中旬もしくは下旬まで生息していることが示唆され，ある程度の個体数が継続的に越冬していることを明らかにすることができました。
シマクイナが記録された環境はオオセッカの生息環境と似ているということです。オオセッカが繁殖/越冬しているような場所ではもしかすると，シマクイナも越冬しているかもしれません。そんな場所をご存知の方は，シマクイナがいないか，注意して観察してみてください。
論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.15.A1
