支援する調査研究プランが決定しました!
2018年9月1日~10月31日の期間に支援先となる調査・研究プランの募集を行なったところ、20件の調査研究プランの応募がありました。これらについて、上田恵介 立教大学名誉教授、金井裕 日本野鳥の会参与、出口智広 山階鳥類研究所保全研究室長、植田睦之 バードリサーチ代表の4名で一次審査を行なったところ、9件が選定されました。この9件にバードリサーチからの1件を加えた10件の調査研究プランをご紹介します。
個性豊かな調査研究プランたち
今年も、鳥たちの行動や選択の背景に迫る研究、個体数や分布の減少が心配される鳥の生息状況を調べて保全につなげようとする調査、長期的なモニタリングを目指した調査など様々な調査研究プランが選ばれています。下記の概要をお読みいただき、より詳しく知りたいと思う調査研究プランがありましたら、タイトルをクリックしてもPDFをご覧ください。
ホームページには10件分全部をまとめたPDFもあります。
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001 アカモズの生息に適したリンゴ栽培方法は?
松宮裕秋(信州大院・総合理工 修士2年)・赤松あかり(同 農学部3年)・原星一(同OB )
個体数が減少し、絶滅が危惧されているアカモズ。実は、果樹園に繁殖の場を移していました。松宮さんたちは長野県全体のリンゴ園に生息しているアカモズの分布と生息状況を調べていく中で、リンゴ園の下草の管理方法の違いによって、アカモズの生息状況が違うことに気がつきました。今年度の調査研究プランでは、リンゴの栽培方法が違う農地の間でアカモズの繁殖成績や食物量などを比較し、どの管理方法がアカモズの生息に適しているのか、またその理由について明らかにしようとしています。農家と鳥の共存の道を切り開いていく調査研究プランです。
002 小笠原諸島~伊豆諸島 ツバメの渡り調査2019
重原美智子
重原さんは、小笠原諸島や伊豆諸島で観察されるツバメがどこから渡ってきているのか、明らかにしようと昨年度からこの調査に取り組んでいます。2018年の春に初認情報を集めたところ、南から順に初認されました。今年度は、引き続き渡りの方向を確かめるとともに、繁殖状況の調査を行なう計画です。というのも、三宅島では3月10日に初認されたにもかかわらず、5月下旬になっても巣立っていなかったからです。その間、ツバメは何をしていたのでしょうか?初認されたツバメと三宅島で繁殖していたツバメは別の個体だったのでしょうか?島嶼部のツバメの実態解明に挑戦する調査研究プランです。
003 巣箱設置におけるカラ類等の長期的センサス
名城大学農学部 野生動物生態研究会
気候変動への鳥の反応や、鳥たちが受けることになる影響については、様々なアプローチでの調査が進められています。名城大学の野生動物生態研究会では、巣箱を使って森林性鳥類の産卵数や巣立ち率、繁殖時期の変化などを長期的にモニタリングしていこうと計画しています。作製する巣箱はちょっと特殊な形状をしていて、カラ類以外にもキビタキも利用できるそうです。巣箱をめぐる両種の戦いがみられるでしょうか?自動撮影カメラによって、どんな生態が捉えられるのか、も楽しみな調査研究プランです。
004 青森県平内町小湊におけるハクチョウ類とコアマモの生態調査
佐藤史幸・小泉遼岳・平内町白鳥を守る会・田中義幸(八戸工大・工・生命環境科学)
青森県平内町にある浅所海岸は全国有数のハクチョウ渡来地として知られています。ここに渡来するオオハクチョウはコアマモという海草を主食としていると考えられており、彼らの首の届く範囲のコアマモは春には全て食べつくされるそうです。しかし、翌年の秋には、もとの状態まで回復するそうです。そこで、佐藤さんたちは、目視による調査とドローンによる空撮を組み合わせて、ハクチョウの分布とコアマモの分布の変化を俯瞰図で毎月記録し、どのようにコアマモがハクチョウに食べられ、渡去後に回復していくのか調べる計画です。ダイナミックな食う食われるの関係が明らかに!?
005 漁によるカンムリウミスズメの混獲は防げるか?
中村豊(枇榔島調査研究会)
カンムリウミスズメは日本近海にのみ分布する海鳥です。個体数の減少が危惧されていますが、その要因のひとつに、延縄漁や刺し網漁での混獲があります。中村さんは、カンムリウミスズメの最大の繁殖地といわれる宮崎県の枇榔島で、GPSロガーによる追跡を計画しています。繁殖期に、彼らがどの範囲を移動し採食しているのか、ロガーからは詳細な軌跡の情報が得られます。そして、混獲の回避などのために多くの知見をもたらしてくれることでしょう。
006 林床の赤い実を食べるのは誰? ~自動撮影カメラで鳥類の果実消費量を定量化する~
前田大成(石川県立大学M1)
鳥類による種子散布についてはいろいろな研究が行なわれています。日本では林床にもたくさんの赤い実をつける植物があるそうです。しかし、林床は観察が困難なことが多く、結実数が少ない種が多いため、観察機会が少ないという理由からあまり研究が進んでいませんでした。前田さんは、これまで見過ごされてきた林床植物の鳥による種子散布を研究テーマとして、まずは、果実の消費者やその消費量を自動撮影カメラによって明らかにしようと計画しています。
007 科学者としてのバードウォッチャー ~市民科学・市民調査の社会学的研究~
高田陽(明治大学大学院農学研究科 )
バードリサーチでは皆さんの参加を得てさまざまな調査を実施しています。このように、市民の方に参加してもらって実施している研究を「市民科学」と呼ぶそうです。高田さんは、市民科学に参加している人はどんな人なのか、どんな思いで参加しているのか、参加した体験は何を生むのか、調査に参加された方たちへのアンケートやインタビューによって明らかにしようと計画しています。 ここで得られた成果を、皆さんに楽しんでもらえる調査の企画立案につなげていけたらいいなと思います。
008 川はユリカモメの道しるべ?
竹重志織(放送大学教養学部4年)
明け方、ねぐらにしていた沖合いから川を遡って飛んでいくユリカモメの群れ。竹重さんは、東京都の神田川で行なった水鳥の調査の際に、川の真上を正確に飛んでいくユリカモメの姿に疑問を持ちました。彼らが川の上を飛ぶ理由に2つの仮説(仮説1:川を目的地までの道しるべとして利用している。仮説2:高層ビルの上を飛ぶより川の上の方が飛びやすい)を立てて、検証していく計画です。周囲の建物など土地利用とユリカモメの行動を比較し、都市計画への提言にもつなげたい考えです。
009 “性格がちがう相手”と浮気して挽回? 個性にまつわるダイトウコノハズクの結婚生活
小野遥(北海道大学理学部生物科学科4年)
島嶼個体群では近親交配が起きやすく、それを回避するための独自の繁殖生態を持っている鳥がいます。小野さんは南大東島で繁殖する亜種ダイトウコノハズクにおいて、面白い着想から研究を進めようとしています。やむを得ず個性が似た(きっと血縁度が近い)相手とつがいになった個体は、浮気をすることで、個性が異なる個体との子孫を得ようと挽回戦略をとっているのではないか、というのです。プレイバックによる攻撃性(個性)の違いを実験的に調べ、DNAから婚外父性率を調べて、挽回戦略の可能性を探る計画です。
010 だれでも参加可能なバードバスとセンサーカメラを用いたモニタリング
バードリサーチ
身近であるがために個体数の減少に気づきにくい鳥たち。希少な鳥と違い、調査に関心を持ち続けてもらうのは簡単ではありません。そこで、ネットワーク化させた独自開発のセンサーカメラとバードバス(水浴び用の人工水場)で、自動的に鳥を撮影し、自動で画像の集積もしてしまおう、という計画です。参加者は機器を設置して、定期的に水を交換するだけです。まずは10か所程度から始めます。
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このプロジェクトは、皆さまの投票とご寄付によって成り立っています
ぜひ、頑張る調査者や研究者たちにお気持ちをお届けください。
調査研究支援プロジェクトでは,みなさんから寄付を募り,それをもとに鳥の調査や研究に対して支援を行ないます(図).寄付していただく際は,応援したい支援先を選ぶことができます.支援していただいた方には,調査研究の成果報告が届きます.鳥類の調査・研究をみんなで支え合いながら,発展させていける仕組みになればと思っています.ご協力,よろしくお願いいたします.
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下記のホームページをご覧ください.
http://www.bird-research.jp/1_event/aid/kifu-a.html
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次の情報を高木( takagi@bird-research.jp )宛てにメールでお伝えください.
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