今年の日本鳥学会大会は9月15~18日に茨城県の筑波大学で開かれます。学会大会への参加は参加費がかかるので,ちょっと気軽にという感じではありませんが,シンポジウムは無料で,どなたでも参加できます。今回のシンポジウムは「生態学者 vs 外来生物」。9月18日に奄美,沖縄,小笠原で行なわれているマングースやノネコなどの鳥への影響も大きい外来生物対策についての講演が行なわれます。
また,大会の方では,以下のバードリサーチのスタッフの発表もありますので,興味ある方はぜひご参加ください。
バードリサーチのスタッフの発表
小型魚食鳥類は減少,夏鳥は復活? 全国鳥類繁殖分布のこれまでの成果
植田睦之・葉山政治・荒哲平・佐藤望
2020年の完成を目指し,2016年から日本の鳥の分布を明らかにするためにはじまった「全国鳥類繁殖分布調査」。この調査から大型の魚食性鳥類の分布が拡大している反面,小型魚食性鳥類は縮小していること,1990年代には減少が心配されていた夏鳥に復活の兆しが見られることなどが明らかになった。
また東京都等で行なっている詳細調査からは,郊外では減少傾向にあるスズメが都心部では増加傾向にあるなど,地域・環境による違いが見えてきている。
東京島嶼の鳥類繁殖分布調査
佐藤 望・望月英夫 ほか
東京都には伊豆諸島や小笠原諸島には大小様々な島があるが,統一的な調査は長年行われていなかった。そこで,2017年の5月~6月にかけて調査を行なった。本土に最も近い伊豆大島ではムクドリやハシボソガラスなど他の島では観察されなかった本土の鳥類が多く観察された一方,ヒヨドリはほとんど確認できず,本土から遠い八丈島や三宅島などで多く確認されるなど島による鳥の違いが明らかになった。
参加型調査 “ベランダバードウォッチ”からみえる住宅地の鳥類群集
三上かつら・平野敏明・三上修・植田睦之
バードリサーチが全国的に行っている参加型調査「ベランダバードウォッチ」のデータから,記録率や記録個体数の多い鳥,バイオマスの多い種などを明らかにした。記録率,記録地点数,個体数の多い鳥類種は大部分が共通しており,現代の典型的な住宅地の鳥類群集の像が明らかになった。
九十九里浜におけるシロチドリの営巣場所
守屋年史・佐藤達夫・岩崎加奈子
千葉県九十九里浜の砂浜環境においてシロチドリの営巣場所について,植生被度,海岸線からの距離,土質,微地形,コアジサシの有無などについて調査した。シロチドリの選択する営巣場所は、砂地で海岸線から離れたわずかに高い地形が多かった。また植生のある場所が選ばれたが,その被度には幅があった。コアジサシのコロニーの存在も影響していた。
ドローンを使ったガン・ハクチョウ類のカウント
神山和夫
ガンカモ類の数千から数万にもなる群れの正確なカウントは難しい。そこでドローンをもちいて上空から撮影して個体数調査ができるかを試みた。北海道のコムケ湖と宮城県の伊豆沼でオオハクチョウ,秋田県の大潟村と北海道の三角沼でマガンを撮影し,ImageJというソフトで自動カウントを行なったところ、高い精度でカウントすることができた。ただし,個体分布が均一なマガンでは複数の写真を合成して数えることが難しかった。
関東地域のカワウ生息状況の変化(1994年~2015年)
加藤ななえ・熊田那央
1994年から2015年にかけて関東地域にあるカワウのねぐらの個体数を調べた。生息数は2005年まで増加傾向にあり,その後は15,000~20,000羽で推移した。一方,ねぐらの箇所数は年々増加して約80か所となった。ねぐらの分布は,調査開始当初には東京湾沿岸に集中していたが,2000年代に入ると河川沿いに内陸部へ広がり,関東地域全都県で確認されるようになった。
カシラダカの就塒行動と就塒個体数の季節的・経年変化
平野敏明
カシラダカの就塒個体数を1994年から2017年にかけて栃木県宇都宮市の里地でモニタリングした。就塒個体数は,12月下旬から1月上旬には63~365羽が記録され,2月にピークとなり,年によって500羽前後の就塒が記録された。ラインセンサスの調査1回ごとの記録数は変動が著しく,就塒調査は本種の越冬個体数のモニタリングに効果的と考えられた。
鳥の卵:博物学シリーズ第2弾
黒沢令子
鳥にまつわるテーマの中から,次世代の研究者に魅力的な研究材料を見つけてもらうための話題提供として卵を取りあげ,産卵,形態,進化についての疑問を元に、多角的に議論する。
バードリサーチのスタッフが関係する発表
里山に生息する猛禽サシバの繁殖タイミングと餌動物量の緯度勾配
カグーの音声コミュニケーションの理解に向けた音声解析
自由集会:カワウを通じて野生生物と人との共存を考える ~カワウとサギの不思議な関係~
自由集会:ロボット聴覚技術を活用した野鳥の行動観測