○英名 Common Pochard
学名 Aythya ferina
○分類 カモ目 カモ科
○羽色(繁殖羽)
オス:頭と首が赤茶色で,目の前方がわずかに黒い.目の虹彩は赤.くちばしは根元が黒く,中央部は青灰色,先端が黒.胸は黒く,背中と脇腹は灰色.上尾筒と下尾筒は黒く,尾羽は灰色.
メス:頭,首,胸が茶色.喉,くちばしの付け根,目の周囲と目の後ろ部分は茶色が薄くて白っぽく見える.虹彩はこげ茶色.くちばしは根元から中央より少し先まで黒く,続いてオスより細い青灰色の帯があり,先端は黒い.背中と脇腹はオスと似た灰色と茶色がかった色とが入り交じる.
○分布と生息環境
ユーラシア大陸に分布し,繁殖地は北緯30-60°で,西はスペイン・イギリスから東は中国東北部までだが,北海道東部でも繁殖記録がある.越冬地は日本を東端として,中国南部からインド中北部を経て中東.ヨーロッパ南部からアフリカ北部およびナイル川流域.日本の越冬地では,沿岸域,平野部,山間部の湖沼などさまざまな環境に生息する.
○渡り
日本では10月に入ると全国的に飛来が始まる.3月になると数が減少しはじめ,4月末までにほとんど見られなくなる.緯度によって異なるが,繁殖地には3月上旬から5月上旬に到着する.
○繁殖システム
一夫一婦で,水深の浅い湖沼の周辺で4月から5月にかけて産卵する.メスは翌年も同じ繁殖地に戻る習性が強いが年齢による差があり,一歳メスでは生存個体の88%,二歳以上のメスでは100%が前年の繁殖地に戻った(Blums et al. 2002).
○食性
浅い水域で採食を行い,環境によって貝類, 無脊椎動物,水生植物などを採食する.
○雌雄の性比が地域によって異なる
ホシハジロはオスとメスの数に地域的な差がある.バードリサーチが2014~2016年の1月に行った調査では,日本列島を北および東に進むほど(緯度と経度の数値に比例して),ホシハジロの群れに占めるオスの割合が高くなっていた(図).ヨーロッパや北米でも,潜水ガモ類にはこうした傾向が見られる.その理由については,攻撃的なオスがよい餌場からメスを追い出している,オスの方が寒さに強い,オスは繁殖地に近い場所で越冬する,オス・メスで好む食物が異なるなどの説があるが,よく分かっていない.
参考記事:カモの性比調査2016報告
○個体数の減少傾向
ガンカモ類の生息調査では,1990年代半ばから全国の総個体数に減少が見られる(図2,環境省 2016).調査地数の変化を考慮した統計的な解析でも同じ傾向が示されており(Kasahara & Koyama 2010),継続的なモニタリングが必要である.ヨーロッパの繁殖個体も1980年代以降減少が続いている.