高校2年生ぐらいまでは、読めば端から頭に入ったものですが、もはや覚えようという気力だけでは何も入らないような脳みそになってしまいました。思うに、自分が今、鳥についてほとんど知らないとして、図鑑を買って覚えようとしたところで、すぐにつまづくのではないかと。まして、似たような色の鳥の写真がたくさん並んでいたりしますから、どこから覚えていいのか途方にくれそうです。でも、そんな時、何か面白いトピックがあったり、決められた数種を見分ければ良いのであれば、はるか高くそびえているように見えた壁がみるみる低くなります。石塚徹さんの図鑑は、そんな工夫に溢れています。ご紹介しましょう。
見る聞くわかる野鳥界 生態編
生息環境とわけあり行動の進化
山岸哲/監修
石塚徹/著・写真・イラスト 中村匡男/写真
出版社名 :信濃毎日新聞社開発局出版部
ISBN :978-4-7840-7285-9
税込価格 :2,376円 |
見る聞くわかる野鳥界 識別編
色と形、声としぐさでの見分け方
山岸哲/監修
石塚徹/著 水谷高英/イラスト
出版社名 :信濃毎日新聞社開発局出版部
ISBN :978-4-7840-7281-1
税込価格 :2,160円 |
識別編は、これから鳥をもっとよく覚えよう、という人にはこの上ない図鑑です。水谷高英さんによる素晴らしい絵は、写真よりも識別のポイントがわかりやすいですし、住む環境や似た鳥ごとに別けてあり、読み手は10種ぐらいの鳥の中で見比べればいい。そもそも玄人にだってワンカットの画像だけで識別するのは至難の業。住んでいる環境、とまっている場所、季節、飛んだり歩いたり鳴いたりしている行動やその時の姿勢から、考えられる鳥の種類を上手に絞り込んでいるわけですが、それを上手く図鑑の中に表現してあります。また、ふんだんに盛り込まれたトピックは、連続写真なども多用し、興味深い行動を紹介しているので鳥への興味を高めてくれますから、「ああ、もう無理!」と途中であきらめてしまうこともないでしょう。行動写真としての面白さがあるので、玄人の方も一度手に取ってみる価値アリ、です。
生態編も帯に「図鑑」と書かれています。識別編がイラストによる図鑑だとしたら、生態編は写真図鑑。ですが、図鑑という枠には決して囚われていません。図鑑であり、読み物であり、ネタ本であり、漫画であり・・・、それでいて、別々のものの寄せ集めではなく見事に融合させています。誰に読んでもらうのか、その人に鳥のことをもっと知りたい、調べてみたいと思ってもらうためには、どうすればいいのか、そんな石塚さんの気配りが張り巡らされているようです。イラストでなんだろう、と目を惹かれ、読んでなるほど、見て覚え、鳥を知らない人も、知っている人も、鳥を見る+αの世界へいざなってくれる本です。 巻末にぎっちりならんでいる文献を見ればわかるように、論文など出所のしっかりした情報をもとに、それをわかりやすく、イラストを交えながら、解説しています。最新の知見もふんだんに盛り込まれています。根拠が薄い情報については、ちゃんとそれが伝わるように表現されているところも、素敵だなぁと感じました。